第2話 精神病の素質
健一が初めて精神病になったのは18歳の4月と、病院のカルテには書かれていることだろう。でも、本当にそうなのか、と健一は疑う時がある。健一は赤ちゃんだった時から精神病だったのではないか。
精神病の原因は100パーセント健一自身にある、と健一は推測してきた。でも、さと子との事件、これが健一の精神病にどれだけの影響を与えたのか。
これから述べる出来事があると、精神病になる人はいるのか、それとも精神病にならない人もいるのか。
その確認のため、健一はさと子に関することを中心に、子供の頃の出来事を思い出せるだけ思い出そうと、頭をフル回転させようとした。
だが、精神病のせいで、健一の記憶力はあまりにも悪く、健一はさと子のことや、自分が子供の頃をたくさんは思い出せない。
あと、幼稚園の卒園後、健一は長い間さと子に会えなくなった。
さと子との楽しい思い出を十二分に作れなかったことが、健一にとっては非常に残念なことである。
今の健一にとっても、精神病というものを考えるうえで大事なことだから、健一はアルバムにある、たくさんの写真を何時間も眺め続けた。
深く考えてみると、健一とさと子の乳幼児期を記録したこのアルバムは、健一とさと子の苦悩が始まる序曲だった。
健一にとって、さと子はかけがえのない女の子だったはずなのに、さと子についての思い出が鮮明ではなく、さと子が薄ぼんやりとした、霧の向こうに行ってしまったかのようだ。
だから、とてもはがゆい思いを健一は我慢しきれないでいる。
もちろん、健一とさと子が赤ちゃんだった頃のことは、18歳の健一には記憶が無い。
だから、母から聞いた話も含めて、健一は子供の頃を思い出し始めた。
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