始まり

式典の行進に憧れて防衛大学校に入り興味のあった専攻をこなして幹部自衛官になった。少し集団行動が苦手だったが他の学生の手を借りてなんとか卒業した。

幹部候補生学校で一般大学の人と訓練をしているある日、日本の戦後初めて戒厳令が実施された。非常事態ということらしい。

正直コンピューターくらいにしか興味がなかったので時事には疎かった。視界をかすめるといってもなんかあるという認識だった。しかし時事問題に詳しいような一般大学の経済学部出身の訓練生にいくつか聞いてみるとどうやら政府はどうしようもない状況になっているらしかった。物流が停滞しているだの、それによっていろんなところで略奪が起きているだの、だんだんとどのような状況になっているのか想像しやすくなってきた。

結局統計を見なければわからないが、統計が出るのは物事が落ち着いてからだろう。だからどうこういうことはできないが、自分たちの仕事が増えることは想像できた。正直指揮官として仕事をすることは正直だるいと訓練中に感じていた。仕事として人を指揮するのはみんなでプログラミングの演習をするのとなにか違う。もっとシビアで残酷なものがある。このあたりが腹で動いていて居心地の悪い感じがしている。

だが状況を改善するために自分の知識が使える予感はしている。例えば群知能を有効に使えばうまく集団を制圧できるだろう。オペレーションズ・リサーチの知識を使えば適切なタイミングで部隊を配置し、戦況の判断ができるだろう。自分が指揮をするのは気が引けたが、知識で状況を改善するのは面白そうだとは思っている。

他の訓練生は浮足立っていたり、逆にゲームに没頭しているものもいたりしているがどことなく収まりがついている。ここらへんは日頃の訓練の成果だろう。

そうこうしているうちに訓練が8割ほど終えた中で突然動員が命令された。

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