無双ゲーのモブ雑兵、天下統一を目指します。
いおにあ
第1話 立志
刀を握ったまま、おいらはくるりと背を返して、すぐさま逃げる。ヤバい、“ヤツ”が来た。太刀打ちすることもできない、神のごとき存在だ。
「どけえいっ!!!
“ヤツ”の鋭い声といっしょに、ビビビビビッ!バババババッ!・・・・・・ピンク色の熱線がおいらの
まずい、もう後がない・・・・・・もう一度、“ヤツ”が攻撃を放つと、間違いなくおいらの人生はここで終わる。なにもなかった、モブ
だが、その攻撃が放たれる直前、おいらは〈ゾーン〉に逃げ切ることに成功した。よかった。これで一安心だ。
〈ゾーン〉に入るといかなる攻撃も通用しなくなる。これでおいらのしばしの間の命は保証されるだな。
安心すると、どっと疲れが押し寄せてくる。ああ、早く休みたい・・・・・・〈ゾーン〉内の兵舎に並んでいる布団に、おいらは倒れ込み、泥のように眠り込む。
物知りの
ゲームというのは、いうなれば将棋のごときものらしい。おいらには詳しいことは分かんねえけれど、ようはこの世界が将棋盤みたいなもので、おいらたちはその駒として、この世界より上位の世界にいる連中にいいようにされているとのことだ。
で、その上位世界の連中――これは“プレイヤー”という――が、おいらたちをゴミのように
プレイヤーというのは、おいらたちの命を刈り取るのが、なにより楽しいらしい。どうしてか分からんが、きっと生まれつきすごく残酷な人たちなんだろうな。
でも、おいらたちにはどうすることもできない。運良く戦場で生き残ったら、こうして兵舎に戻り布団で寝る。起きたら食事をして、また新しい戦場に駆り出される。天下無双だというプレイヤーたちは、おおよそ同じ人間とは思えない超絶技巧で、おいらたちをひたすらに
布団にくるまっていると、夢を見た。久しぶりの夢だ。
夢の中では、仙女様がでてきた。
「こんばんは・・・・・・
仙女様の神々しさに、おいらは黙ってうなずくことしかできねえ。
「モブ
え?それは本当だか?いや、うそに決まってるな。だってこれ、夢なんだもの。
「あなたには“バトル・ダンス”の力を授けましょう。バトルというのは戦い、ダンスというのは踊るという意味です。あなたはダンスをするつもりで、明日からの戦いに参加しなさい」
仙女様は、ときどき訳の分からないことを言うな。きっと、“プレイヤー”たちのいる世界の住人なんだろうな。
「さあ、目覚めなさい八兵衛。内なる力を解放するのです」
そこで、夢は終わった。
いつもの朝。死ぬまで続く、戦場に駆り出される毎日。さあ、今日も戦うだ。
ホラ貝の音を合図に、今日の戦争が始まった。
ああ、また来たよ。“プレイヤー”が。大地を裂いて、そこから炎を噴き上げて、いらたちを真っ黒焦げにしている。今日こそ駄目だな。おいらはそう堪忍した。
でもそのとき、ふと明け方に見た夢を思い出した。仙女様の伝言・・・・・・「踊るように戦え」だっけ?。人生の最後くらい、なんかちょっと変わったことするのも、悪くないかもな。
迫り来る“プレイヤー”を前に、おいらは「ダンス」とやらを踊ってみる。よく分かんねーけど、こんな感じか?槍をブンブンと降ってみる。
「な・・・・・・ぎあっ・・・・・・!?」
“プレイヤー”から妙ちきりんな声があがった。
「え・・・・・・どういうことだ?」
おいらもまた“プレイヤー”と同じように驚く。
おいらの手にしていた槍が、“プレイヤー”の喉元に刺さり、貫通していたのだ。
「ぐ・・・・・・なにかのバグか?・・・・・・こんなモブ兵に俺がやられるとは」
よく分かんねー単語を発したのち、“プレイヤー”は白く発光して、消滅した。
え・・・・・・おいら、もしかして“プレイヤー”を倒しちゃった?どういうこと・・・・・・?
「おいおい、八兵衛のやつ、“プレイヤー”をやっちまったぞ」
「なに?どういうことだ」
「分からん。とにかく、上に報告だ」
周囲の兵たちの騒ぎが大きくなっていく。
これが、
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