「今日バイト終わったらソッコー帰るから

鍵、いつもの場所に置いておくから 部屋で待ってて」


美大の予備校で知り合ったキミはひとつ下の学年

年下の彼氏


この春、高校を辞めるとすぐに家を出てバイトしをながら予備校に通っている



音が聞こえないように家から随分離れたところから押してきたバイクを

いつもの場所までくるとスタンドを立てながら


「ハルはさぁ

お願いだから今年は落ちてよ

オレ 一発でキメるから

そしたらさ、東京で4年間一緒の大学に通えるんだぜ?」


今日は

一回目の模試の結果が出て

言われなくてもそうなりそうで落ち込んでいるというのに…



「おいで!」


キミは

いつものように抱き寄せて素早くキスをする



イタズラに笑うキミを不機嫌そうに見上げると

今度はもっとやさしくて長いキスをする




今日は

遅くなりすぎた

パパももう帰ってきているはず

夕飯を片付けられなくてママはきっと怒ってる

課題が終わらないというワンパターンしかない言い訳もそろそろ疑わしい


急いで次の角まで走って曲がる前に一度だけ振り返ると

笑いながら手を振るキミがいる


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