【KAC20255】恋するダンクシュート・マシンガン ~部室にお布団の持ち込みはキケンです~

尾岡れき@猫部

だから、あんな賞をもらうんだって! 君達、自覚ないよね?


「キャプテン、天下無双杯に参加しよう!」

「は?」


 我らがキャプテンが、マネージャーの提案に目をパチクリさせる。


 町内の体育協会が企画した、ストリートバスケの大会。そこにプロチーム、ドラゴンライダーも協賛し、かつてないビッグイベントになった。


 優勝チームには、温泉旅行をプレゼント。はいはい、もう君の思惑はよく分かった。キャプテンと旅行に行きたいのね。うん、思考が単純すぎる。最早、勝利を確信して変なダンスを踊っているし。


「今のみんななら、良いところまでいけると思うの! ね、黄島君?」


 それ、俺に振る?


「そうだなぁ……」


 当のキャプテンは、欠伸混じりに言葉を返したのだった。

















「むー」


 不満です。

 マネージャーが、全身でそう表現している。


 一方、部室の一角で大会の戦利品、高級布団店の羽毛布団を堪能し――キャプテンは夢の中だった。


 バカなの? って思うでしょ。付き合いの長い俺もそう思う。でも、お昼寝愛好家のキャプテンにとって、これは平常運転で。


「ねぇ、空君? 聞いてる?!」

「すー」


 寝息でお返事も平常運転です。

 最強の布陣をマネージャーは編成したと意気込むが、試合結果は予選敗退。


 ただね、町内の体協主催の大会で、チビっ子もたくさん参加していたのだ。優勝賞品は、ドラゴンライダーズと行く、宿。そりゃ、ちびっ子を応援したいキャプテンは、勝ちを譲っちゃうって。それが分かっているから、マネージャーも怒るに怒れな――い?



「きゃっ、ちょ、ちょっと、空君?!」


 見れば、寝ぼけたキャプテンがマネージャーを布団に引き寄せたところだった。


「んー、もう食べられにゃい」

「寝ぼけてるの? 起きて、空君! ちょっと、やっ――」


 キャプテンって寝ている時、抱き癖があるよね。分かっていて、近づく君もどうかと思うけどさ。






「それじゃ、練習試合のスケジュールなんだけど」

「ちょっと、黄島君? 普通に進めないで――」

「どうせなら、旅行は翼と2人だけで行きたい」


 ボソリと囁く言葉は寝言か本心か。


「だから、そういうの2人きりの時に言えよ……」

 

 終始こんな調子だから、バカップル賞なんてもらうんだって。


 自覚ないでしょ?

 思わず出かけた言葉を、なんとか飲み込む俺だった。

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