第16話 漫画の影響力
「彩音、一緒にお風呂入ろう」
「うん……あ、いや、今日は1人で入ろうかな」
断れば、キッチンから母が出て来た。
「どないしたん? 2人喧嘩でもしたん?」
「いや……」
「彩音?」
朱音に覗き込まれて顔が赤くなる。
「また熱やろか?」
朱音の手が、額に当てられる。
「あー、ちょこっと熱いかもな」
「これは、ちゃうねん」
「何が違うん?」
昼に学校で読んだ双子姉妹の百合漫画を自分と朱音に例えてしまって、何とも言えない恥ずかしさに苛まれているのだ。
そうとは言えず、ただ赤くなるわたし。
(そんな目で朱音を見るやなんて、わたしって変態やん)
「と、とにかく、今日は1人で入りたい気分やねん」
「じゃ、明日は一緒に入ろうな」
ニコッと笑う朱音は、上機嫌に鼻歌を歌いながら脱衣場へと入っていった。
「明日か……」
明日になったら大丈夫だろうか。いや、1ヶ月くらいは意識してしまいそうだ。
◇◇◇◇
入浴後は大抵朱音と2人でぬくぬくのコタツに入りながらアイスを食べるのが習慣なのだが……。
「わたし、今日はめっちゃ眠いねん。先寝るわ」
早々に自室に戻って布団に潜った。
これなら一緒に寝ようと誘われずにすむ。尚且つ、しつこく追及されることもない。
我ながら良い案だと思い、目を瞑る。
——目を瞑ること30分。
「眠れへん」
時計は、まだ20時を指している。普段は22時から23時に寝ているのに、眠れるわけがない。
かと言って起きていると、朱音に一緒に寝ようと誘われかねない。やはり目を瞑るしかない。
「そうや! こんな時こそ魔法の本の出番や!」
急いで魔法の本を本棚から取り出し、ベッドに入る。そして、ベッドサイドにある灯りをつけ、本を開いた。
「てか、ほんまこの本誰からなんやろ」
持ち主は分からないが、ありがたい。
2ページ目に差し掛かる頃には、既にうとうとしている。そして、次のページを開けば——。
「彩音」
「え、お姉ちゃん!? なんで一緒に寝てんの?」
隣に朱音がいた。
朱音は仰向けの状態から寝返りし、肘をついてわたしを見てきた。しかも、そんな状態で、胸のボタンを2つ外しているものだから、ここからバッチリ谷間が見えている。
「今日、一緒に寝よう言うたやん」
「せ、せやったっけ?」
とにかく、目のやり場に困る。
「どないしたん?」
「あー、いや……」
言葉に詰まっていると、わたしの視線に朱音が気付いてしまった。
「触ってみる?」
「え?」
「彩音、いつも言うてるやん。『お姉ちゃん、おっぱい大きくて羨ましいなぁ』って。触ってみたいんやろ?」
「いや、言ってるけど……触りたいって意味では……」
朱音がわたしの上に跨った。
「えっと……お姉ちゃん?」
「触ってええよ」
わたしの手を取り、朱音はそれを自身の胸に当てた。
「どう?」
「あー、うん」
もう、わたしの顔は耳まで真っ赤だ。
「やっぱ、服の上からやと分かりにくいんやろ」
「いや、そんなことは……」
朱音は更にボタンを2つ外し、肩を出した。そして、胸をポロンと出した。
「お姉ちゃん!? 何してんの!?」
「直の方が気持ちええで」
と言いながら、わたしの手を取り、再び自身の胸にそれを当てた。しかも、今度は服越しではなく直に。
(うっわ、ほんまに気持ちええし。なんやこの触り心地は。絹か、絹なんか!?)
「あぁ……」
朱音が女性らしい声で鳴いた。顔も赤くなって、何ともイヤらしい顔になっている。
「あ、ごめん。揉みすぎた」
気持ち良すぎて、胸を普通に揉んでいたわたし。朱音の変なスイッチを押してしまったようだ。
「彩音がその気なら、あたしやって」
「ひゃッ」
朱音の手がわたしの服の中に——。
ガバッと、布団をめくって起き上がった。
「なんや、今の!?」
辺りをキョロキョロと見渡せば、隣に朱音が眠っていた。肩まですっぽりと布団をかけて。
「お姉ちゃん? 何で隣に……って、まさか、わたし」
先程の感触が手にしっかりと残っている。朱音に掛かっている布団をそっと開いて覗いてみる。
「良かった……」
朱音のパジャマには乱れは全くなかった。もちろんわたしのパジャマにも。
「彩音……?」
「あ、ごめん……起こすつもりはなかってんけど」
布団を元に戻し、わたしも朱音の隣に並んで横になる。すると、ギュッと朱音が抱きついてきた。
「彩音、大好き」
朱音が、わたしを抱き枕のようにして寝ることは日常茶飯事。いつものこと。それなのに、さっきのエロい夢のせいで、ドキドキが止まらない。
「彩音、大丈夫? めっちゃ心臓バクバク言ってんで」
「あ、うん。大丈夫」
「そういや、今日の漫画エロかったよな」
「せ、せやね」
動揺していると、朱音が耳元で囁いた。
「あたしらもやってみる?」
「ひゃッ」
朱音の手は、わたしのパジャマの中に入ってきた。そして、その手はわたしの胸に。
「お姉ちゃん。姉妹でやっぱそれは……って、寝てるし!」
朱音は、わたしの胸に手を置いたまま眠ってしまったようだ。耳元で寝息が聞こえてきた。
「これ、どないしたらええねん」
そっと、朱音の手をどけようと試みる。
「ひゃ……あッ……」
朱音の手が絶妙なところに当たって、変な声が出てしまった。
朱音に聞かれていないか心配になって横を見るが、眠っている様子。
(これ、無駄に動かさへん方がええわ。寝返り打っとったら勝手に離れてるやろ)
わたしは諦めて、そのまま眠ることにした。
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