女で得する事と損する事

縞間かおる

第1話 私“立石春香”の履歴書

 学校を出て最初にお勤めしたのは青山のオフィスだった。


 笑っちゃうくらいにあどけないミーハーで、なまじ服飾に興味のあった当時の私は、『ショーウィンドの中の風景』の様な青山のドレスコードにタジタジとなり……実家暮らしをいい事に全てをコーデにつぎ込んだ。

 そしたら色々なものが見えて来て……「私にもできるかも?」と最初の転職でアパレルの世界に飛び込んだ。

 でもそれは思い描いていた物とは大きくかけ離れていて、私は女というイキモノにすっかり嫌気が差し(あ、業界の男ドモにもだけど)その挙句に悟ったのは『自分には創る才は無い』と言う事。


 アラサーとなり、ストレスと絶望ですっかり疲弊した私の手の中に残ったのは……ゴッソリとローンが残っているマンションと「物を売る事ならなんとかできるのでは?」と言う淡い期待だけだった。


 しかし、この歳でプーになってからの再就職は厳しく、書いた履歴書が百枚を超えても正社員の口は見つからない。

 文字通り『食うに困り始めて』……近所の商店街のパン屋さんでは袋いっぱいのパンの耳が安く手に入ると聞きつけ、スウェット上下で出掛けて行った。


 “パンの耳”の常連となりパン屋の女将さんとも世間話をする様になって……商店街と言う場所は決してオワコンでは無いのだと思えて来た。

 その可能性に賭けてみようと思った。

 私は目指す業界を変え、職安にも日参した。

 その結果、どうにかこうにか就職できたのは日用品を扱う『カキタ』という会社だった。

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