第2話

「じ、実は春野さまを連れてくる予定だったのですが、間違えてしまい……」

「一番間違えちゃいけないやつだぞそれ」

「……夏野様は実在しないことになってしまいました」

「なにやってんだで済まされねえぞ……」


 こいつの未来が不安になってきた。大丈夫か、こいつ。

 そして俺、大丈夫か。


「さ、さすがに生き返らせることはできないので……」

「できたらすげぇよ、100年後の未来でも無理だな」

「な、なので異世界に転生してもらおうと思いまして……」

「マジ?」

「その際能力は、ご自身で一つ選んでもらい……」

「マジ??」


 よっしゃあああっ! 今までの人生で叶えられなかったことをするしかない。

 まぁ能力がもらえるなら今までの行動も見逃してやろう……。


「じゃあダンススキルアップグレードしたら天下無双できるってことか」

「? そんなスキル、まだないですね……。ちょっと上司に連絡してスキル与えますので……。では夏野様のスキルは――」

「さっき言ったヤツで頼む」


 ダンススキル手に入れてダンス界天下無双……!

 そうと決まったら前世で敵わなかったバックダンサー、いや、天下一のダンサーになってやる!


「本当にそれでいいのですね?」

「いいよ、早く連れてってよ」

「では……スキルを与えます」


 最後に聞こえた声は、そんな声だった。





『たんすスキル』を取得しました。





 夏野春陽が習得したスキルは案内人の聞き間違いによって『たんすスキル』というハズレスキルになったのはまだ知るはずもない――。


 きっと知るのは森の中で目を覚ました後だろう。












「『たんすスキル』って、ただのハズレスキルじゃねーーか!」


 そんな叫び声が聞こえたのは、案内人のセカイも、知るはずがない――。

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【KAC20255】人助けをしたら転生しました。~ダンススキル習得でダンス界無双するはずが、ポンコツ案内人のせいで大変なことになりました~ ほしレモン@カクヨム低浮上 @hoshi_lemon

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