第15話 風呂上がり side:平倉

side:平倉

勝村の姿を認識すると、自分の喉から、ヒュッっと音がした。

深緑のもこもこを羽織り、緑のタータンチェックのズボンを穿いた勝村が、濡れて艶やかな長い前髪の間から冷ややかで怪訝な視線を向けてくる。

私はその視線に射ぬかれ、目を伏せる。

その間に静かに距離を詰めた勝村は下から顔を覗き込んでくる。

そして、私の首もとに鼻を寄せ匂いを嗅ぎ、恥じらう私を見て微笑んだ…


なーんて、一瞬の間に妄想を巡らし、そっと目を開け、現実の勝村を見る。

‥は? かっこいいけど。


「ちょっとまって、なんで半袖なの?」


「しょうがないでしょう、長袖はタンスだもん。」


じゃあ仕方ないか。

私の目は自然と勝村の姿を上からしたまでじっくり眺める。

バブル時代に流行ったような髪型。普段は前髪におおわれた、キリッとしている、それでいて猛々しい眉に、長いまつげ。大きな目。ちょっとつり目。高めの鼻。一文字な口元。噛む力が強そうな顎。

顔全体を例えるなら恋愛漫画の俺様系クール王子。

はい、かっこいいです。


ちひかわのさけかすとシーザーが印刷されたTシャツ。意外としっくり来る。 制服より布が薄いから、背中にすこし筋肉がついているのが分かる。葉っぱの柄パン。これが似合うのは想定内。


前腕にも筋肉がついていて、ダイヤモンドの細長いバージョンみたいな形。


足は靴下焼けでポッキーみたいになってる。ふくらはぎの中腹ぐらいから、一段と大きい筋肉がついていて、エンジンがついてるみたいだ。


観察はこれくらいにして‥

私はベットから布団を拝借する、美姫も私の意図を察したようで、勝村を挟むように立つ。


目を合わせてせーの。


「勝村! おとなしくしろ!」


布団で勝村をつつむ。

そして、逃げられないようにする。

勝村は抵抗する。

いやがられてるわけではない、遠慮されてるのだ。

だから、全力で押さえる。

美姫も全力で押さえる。

さすがの勝村も逃げ出せない。


「‥息が」


「あぁ~なるほどぉ~。」


私たちは、勝村の顔だけを出してあげる。布団の上からがっちり2人がかりで抱き締めたまま、座る。

勝村は、しばらく抵抗したが、諦めた。私たちも力を緩める。


疲れた。でもほどよい疲れで心地よい。私たちは、机がない方に倒れ込む。

美姫と目が合い、お互いに微笑む。

しばらくそのままのんびりしていた。

洗濯機が仕事を完了した音がして、美姫は起き上がり、起き上がろうとする勝村を止めて、階段を降りていった。

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