第1話

大学の講義終わりに喫煙所で1本タバコを取り出し火をつける。講義終わりのニコチンは身体によく回りほっとする。もう宮下先生とは1年も会っていない。そもそも連絡先も交換していないし、私は宮下先生の生徒だ。宮下先生にとってそれ以上でもそれ以下でもないのだ。思い知っているようで私はまだ宮下先生のことを思うと懐かしいような今でも会いたい気持ちになる。私は今もあの夜の中にいるのだ。


 「君、何しているんだ」

校舎裏で天音あまねは1人でタバコをふかしていると物理の担当の宮下先生は天音に向かって言っていた。天音はめんどくさいことになったな、と思いながらタバコを吸うのをやめない。身体がニコチンを欲している。

 「聞いているのか。君新入生だろ。今回は見逃してやるから、タバコを吸うのはやめなさい」

 「無理だよ。私タバコやめれない」

 「いつから吸っているんだ?」

 「高校入ってから」

宮下先生は天音に色々聞いてしばらく話していた。天音はタバコを吸いながら宮下先生の質問に答えていた。そして宮下先生は天音に言った。

 「タバコやめるか、吸うんだったら俺の前で吸え」

天音はじゃあ今はいいんだ、と思い笑った。


  放課後宮下先生も喫煙者で2人で校舎裏でタバコをふかした。先生は独身で1年前に彼女がいたが別れたみたいだ。彼女はタバコが嫌いだったから彼女のいないところで吸っていたよ、と美味しそうにタバコをふかしていた。

 「今日バイトだ。行かなきゃ。めんどくさい」

 「なんのバイトしているんだ?」

 「飲食店」

 「頑張れよ」

 宮下先生は私のことはただの生徒だろうか。天音は宮下先生に惹かれていた。

 バイトが終わって帰ろうとして自転車にまたがったときにコンビニから私服の宮下先生がレジ袋を持って出てきた。天音は宮下先生に近づくと宮下先生も気づいた。

 「天音さんじゃないか。バイト終わりか」

 「先生こそコンビニで何買ってんの?」 

 「俺は晩酌のつまみとビール買っていたよ」

 私服の宮下先生はいつものスーツ姿とは違い親しみやすかった。

 「先生の家ってこの辺なの?」

 「そうだな。アパートだけど」

 「先生の家に行きたい」

 天音はバイトから疲れて理性が利かなくなっていた。宮下先生のことが知りたい。

 「ダメだよ。天音さんも疲れているだろう。早く帰りなさい」

 「私絶対に先生の家に行く」

 天音は宮下先生の目をじっと見た。宮下先生は目を逸らさなかった。宮下先生は無言で歩きだし、天音は宮下先生の後を着いて行った。

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