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第1話

「莉音ちゃんさ、今日暇?」


「暇じゃないです。夜李さん、さっきのは完全に誘拐だと思います」


「瑆にはちゃんと連絡したから安心して」




《莉音ちゃんは預かった。黙って大人しく部屋で待ってろ》


携帯の画面を私に見せながらとっても満足そう。



″夜李さんが校門で待ってる″と6限開始の直前に枢木くんから聞かされて、どうするべきか迷ってれば″俺死にたくないです″と今すぐ行けと言わんばかりの本気の訴えをされた。


携帯以外の荷物だって学校に置きっぱなしのまま、いつもの場所まで連れてこられている。



「連れて来る前に暇か聞くのが普通だと思うんです」


「三坂さんから莉音ちゃんの近況は?って探りがエグいんだわ」


「どうしてですかね……」


「雪城さん関係無しに、あの人が間違いなく莉音ちゃん気に入ってんの。癒し求めてんの。あの人の周りって獣しかいないから」



どういう意味だろう……


「″獣ってルイさんも?え、絶対違う″」


「!?」


「うん、相変わらず表情通りの心の声。素直で笑える」



瑆との今があるのは夜李さんのおかげでもあるんじゃないかって、私は勝手に感謝している。


敵に回したくない存在の人。




「今度は私の携帯で何してるんですか」


「んー?俺と連絡取れるようにしてやってる」


「いや、冗談抜きで必要ないです」



周りの様子とかもうちょっと気にして欲しい。


あの奥のグラスを持って立っている女の人とか、私から視線を逸らすことなくずっと睨みつけてきている。


この場所って連絡先の交換とかも一切禁止って、前に夜李さんから聞いたような気がする。



「夜李さんって女の子の連絡先たくさん入ってそうですよね」


「俺のイメージ悪っ。女の連絡先なんていちいち入れてねーわ」


「意外です」


「その場ですぐ相手見つかるし。キープしとく意味なし!」



女友達って意味だったんだけどな…ってひとり思っていれば、本当に何の前触れもなく急に夜李さんがテーブルを勢いよく殴ったかと思えば立ち上がる。



うそ……今のでそんなに気分悪くさせた……?



「見せしめしとこうか」


「…………」


テーブルを挟んだ向かい側に座っている私の方に来ると、表情ひとつ変えずに手をあげるのが見えて思わず目をつぶる。


でも″待ってて″の声とポンっと軽く頭にその手が乗せられただけで、目を開けた時には夜李さんの遠ざかっていく背中が見えた。



流れている音楽以外の音が全て消えて、緊迫した雰囲気に誰も動けずにただみんな夜李さんを目で追っている



「えっ………」

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