18 全部出せ
その日の晩餐には私が魔力充填したワインが食前酒に出された。
「皆で乾杯して祝おう」とエドモンとジョゼフが言って、使用人一同隅々まで振る舞われた。
その結果、私たちの新居は眠れる館となった。エドモンとジョゼフと私は耐性がついていて、寝落ちしてしまうことはなかったが、ジョゼフが屋敷に結界を貼った後は、早々に寝室に転がり込んだ。
一番奥は3人の寝室で何人も一緒に寝られそうな大きなベッドがでんと置いてある。そこに3人でダイビングして川の字で寝てしまった。
その日はいろいろバタバタしたけれど、私はずっとそんな風に生活して行くのだと思った。彼らと結婚したけれど、多分白い結婚で、私はお飾りの妻で、何年か後には解消するのだ。それまでにこの世界を知って、この世界に慣れていけばいい。
◇◇
しかし、次の日の朝、目が覚めて見れば両側から手を握られていた。
「やあメイ」
「おはよう」
そして二人のイケメンのドアップが迫り、頬に両側からキスされた後、二人の夫にかわるがわる唇にキスをされる。
「あのあの、そんなつもりじゃあ」
私が慌てて身を引こうとすると、二人の夫の顔が怖くなった。
「ほう」
「メイはどんなつもりだったのかな」
「わ、私は白い結婚でもお飾りの妻でも全然構いませんので──」
「お前、そう思っていたの」
「俺達が大事にして手を付けないでいたら、そーんなこと考えてたのかー」
「許せん!」
ああ、二人の夫を怒らせてしまった。どうしよう。このままここを追い出されるのだろうか。家令も侍女も冷たい感じだし、何か妹枠か幼馴染枠か婚約者枠みたいな綺麗な令嬢もいたし。
二人の夫の顔はますます怖くなった。
「これは、ちょーとばかりお仕置きをした方がいいんじゃね」
「折よく、みんな寝坊しているしな」
「よし、頑張る」
「可愛い嫁のために」
二人は藻掻く私の服をてきぱきと脱がしていく。二人の連携ができていて手際が良すぎる。身包み剥がして追い出す気だろうか。せめて離れか別宅に追い出して欲しい所だが、それも無理だろうか。
こんな時に土人形は何をしているのか、助ける気はないのかと、布製のかごを見れば人形は土人形になっている。何を言っているのか分からないだろうが私も焦っている。つまりツンと澄まして人形のふりをしているのだ。そういや馬車の中でも3人でいた時は大人しかった。
人形にかかずらわっている内に、二人は私の着ている服を全て剥ぎ取ってしまった。そして自分たちも手早く服を脱ぎ捨てる。そこにはお宿で見たあの美しくも獰猛な裸体が二体もあって、怖いとか恐れ多いとか怯む間もなく、遠慮なく襲い掛かって来た。
「待って」とか「やめて」とか「お願い」とか切れ切れに喚いている内に段々気持ちよくなって、頭の中がピンクに染まってくる。どうしたことだろうこれは。出てくる声も「ああん……」とか「やあん……」とか鼻に抜けた甘え声だ。足掻けば足掻くほど底なし沼のようなピンクの靄に落ちてゆく。
これはお仕置きだろうか。こういうお仕置きもあるのだろうか。蕩け切った身体を焦らすだけ焦らされて、彼らの言うままにお願いを何度も言わされる。愛の言葉も言わされる。たくさんの約束と、たくさんの要求の言葉を言わされてやっと願いは叶えられる。
そこはもうどっぷりの抜け出せない檻で、私は心も身体も縛りつけられる。
そういう訳でその朝私は花を散らされ、可愛がられ、たっぷりたっぷり躾けられたのだ。二人がかりで酷い。
◇◇
食事の後、私付きの侍女さんを宛がわれて、お風呂に入れられ綺麗に隅々まで洗われた。体中に散らばっている二人が競い合って付けたキスマークを見て、侍女さんたちが微妙な顔をしている。恥ずかしくて死にたい。
お風呂から出て、ゆったりした露出の少ないドレスを着せられる。化粧をして、こちらに来て肩より少し長くなった髪を綺麗に結われて鏡を見ると不思議な感じがする。
「よくお似合いでございます」
言われたとおりに似合っているような気がする。馬子にも衣裳だろうか。
リビングに戻ると二人の旦那様が「よく似合っている」「可愛い」と褒めてくれた。素直に喜んでしまう。
その後何をしたかと言えば人払いをして、私の身の内の倉庫を全て吐き出させたのだ。二人がかりで抱き潰しておいて酷い。
「移民局から来た手紙は、あれが初めてじゃないんだろう?」
手紙は私が開いて確認すると、暫くしてかき消すように自動消滅する。某スパイ映画と違ってボンッと火が出たりはしない。証拠が無いものはしらばっくれていればいいのに馬鹿正直に白状する私。馬鹿だなあ。
「さあ、いうこと聞いて」
「全部出すんだ」
「私たちの仲で内緒はいけない」
なんだか取調室で取り調べられている犯人になった気分だ。
「メイは私たちの嫁だろう?」
「隠したらお仕置きするぞ」
お仕置きって、これ以上何をするのか。
それで倉庫に入っている物を全部出していちいち説明した。部屋の中は私の持ち込んだガラクタだらけ。だがスマホとパソコンと写真はない。
「これらはすべて没収する」
「メイには俺たちが用意したものを使用し、身に着けてもらう」
「ええーーー⁉」
「何だ、いやなのか」
「だって下着や部屋着はこっちのあんまり好きじゃないし」
私は王都の宿舎で買ったごわごわの上下を見せて、納得がいかない服の値段について文句を言う。
「これで小金貨2枚もしたのよ。どうして衣服は高いの? それに着ていたら肌が擦れて赤くなったし」
「ふーむ」
二人の旦那様は私の下着を興味深げに手に持って見ている。引っ張ったり匂いを嗅いだりする。
「もう、恥ずかしいから止めて!」
二人が持っているブラやらレース花柄のショーツを引っ手繰って、身の内の倉庫に仕舞った。ついでに下着類をまとめて倉庫に収納する。
「何で仕舞うんだ、手触りが良かったから見ていたのに」
エドモンが文句を言う。
「そうだ。丁度綿織物の事業を起こす話に一口乗ろうと思っていたところだ。面白いデザインだし使えるかもしれん」
ジョゼフも未練たらたらで文句を言う。二人そろって私の前に大きな手を出す。
「今まで来た異世界人が持ってなかったの?」
身の内の倉庫じゃなくてアイテムボックスとかあるだろう?
「聞いたことはないなあ」
「うそ、定番だけど」
「年寄連中なら知っているかもしれんが、それより」
「さっきの下着を出せ」
大きな手をひらひらさせて催促する二人。こいつら変態なのか?
「んもう」
私は二人の圧に負けて、未使用の肌着を渡す代わりに、下着や部屋着は元の世界から持ち込んだショーツやらブラ、タンクトップにしてもらうようお願いした。
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