夢

　あの夢を見たのは、これで9回目だった。

　1回目の時は何も感じず、あぁ、キミなら大丈夫だろうと、漠然と思っていたし、キミならその夢を叶えてくれると、ボクは疑っていなかった。

　しかしキミは失敗した、原因はキミ自身の奢り、怠慢、傲慢さによる、実力不足だろう。

　ボクは知っているよ、キミはしっかりとやればなんだってできるだろうって。

　そして、2回目。

　キミは全く反省も努力もせずにきたんだね？それじゃあ同じことの繰り返し。

　お願い、ボクに無駄な夢を見させないで、失望させないで。

　3回目、さすがに少し思うところはあったのか少しだけ練習したようだね？でもまだまだ。

　そんなちっぽけなことで夢が叶えられるはずがないでしょう？

　4回目、3回目と同じく少しの練習、だけど顔つきが最初の頃と全然違うね？

　最初は自信に満ち溢れていた顔だったのに……今はそう、顔面蒼白、まっしろを通り越し文字通り、青白い顔。

　5回目、もうなんのためにここにいるか、自分が何をしているのか、何をしていたのか、何をしたいのか、何を目指しているのか……自分の夢さえも見失っている様だね？

　6回目、そこにいるのは魂が抜けきっているキミ。

　ハッキリと言ってもう何も期待もできない。

　でも挑戦をするのなら、それをボクは見届ける。

　7回目、キミの瞳は覚悟が宿った。

　それでも今の今までのツケがまわり、上手く立ち回れない。

　ダメダメだね、まだ。

　いくら自覚をし、覚悟を決めてももう遅い。

　誰もキミに期待もしていない。

　それでもキミはまだ……

　8回目、覚悟だけでなくやれることをやってきたのだろう、その瞳、身体つき、何よりまとっているオーラ。

　何もかもが今までの中で最高に達していた。

　そのおかげかあと一歩、そうあと一歩の所まではこれた。

　でも、その1歩が届かない、その1歩が遠い。

　9回目、この夢を見させてもらうのももう9回目。

　もういいだろう、もう充分だ。

　キミはいよいよ完成された状態でこの9回目にやってきた。

　もう勝ちを確信すらしているだろう。

　……最後の最後でキミはまた傲慢に戻ってしまった。

　ダメなんだよ、それじゃあ。

　ボクはね？とてもとても。

　強欲なんだ。

　全てが終わった時キミは膝まづき、その瞳からは力は失われ、空っぽの状態でボクを見上げる。

　ごめんね、ごめんね？

　キミの全部を奪っちゃって。