十四夜
茶村 鈴香
十四夜
眠れない
ねぇ眠れないの
御伽話をして
桃太郎でも
一寸法師でもいい
御伽話をして
腕まくらは首筋が痛い
背中から抱いて
床まで届く黒髪を撫でてよ
「昔むかし
桃から産まれた
桃太郎の
家の庭には
大きな柿の木がありました
柿が熟れても
猿も蟹も来ないので
熟れた柿は
庭の池に
ぽちゃんと落ちて
ぶくぶくぶく
ぽちゃんと落ちて
ぶくぶくぶく
ぽちゃんと落ちて…」
…って だから ほら
あなたが先に寝てしまう
ねぇ
あした月が満ちるの
私 帰らなきゃ
今夜はあなたと眠らずに
一晩中
笑ってたかった
くちづけも
いとなみも
ぜんぶまぼろし
せめてあなたに
見てもらいたかった
満ち足りて眠る私を
満ち足りて閉じた瞼を
ほら 支度をしろと
迎えの者の呼び声
いつかね またいつか
きっと月の裏で会える
今はさよなら
おやすみなさい
会いたくなったら
雲のない夜空を見上げて
十四夜 茶村 鈴香 @perumi
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます