第10話 リレー

     リレー


 今日の体育は百メートル走である。といっても、三人一組でバトンをつなぐリレー形式であり、そのバトンに魔力を籠めていく、あくまで魔法をつかうことが前提の競技だ。

 体育は基本、いつも同じ三人組で行う。メロとヴィラと一緒だけれど、メロは豊満なタイプで、かつ人との距離感が少しバグっている。待ち時間などに、ボクの膝にすわってくる。奥まですわられると、ボクの股間に彼女のお尻がふれて、そこに別のモノがついている、とバレてしまうので、ボクはやや前傾となって彼女の背中を押しとどめるようにする。

 それでも、彼女はボクの手をとって、自分の胸へともっていく。それは触って欲しい……というより、密着度を高めたいという現れだろう。ボクの手が彼女の胸に置かれていれば、否応なくボクは彼女を抱きかかえる姿勢になるのだから……。

 つまりメロは人とべたべたと密なコミュニケーションをとるのが、もともと好きな子なのだ。

 ボクとしては反応してしまいそうになるので、困るところだけれど、だからといって邪険に扱うと、彼女にも悪い気がして……。

 ただヴィラが目を光らせてくれているので、それ以上の関係にはすすみそうもない点はありがたい。

 もっとも、メロもボクがエミリアと付き合っていることは知っているので、本気で肉体関係をむすぼう、ということではない。やはり誰かとくっついていたい、というのが彼女の本質だ。

「メロは誰かと付き合わないの?」

 ボクがそう訊ねると、メロはきょとんとして「私? まだまだ早いよぉ~」と照れもなく応じる。

 発想がまだ子供――。もっとも九歳で、親と離れて学園に来ており、仕方ないのかもしれない。母親との密な関係があって、それが急に途絶えたことで誰かに甘えたい年ごろなのだ。


「この競技って、ただバトンに魔力を籠めればいいの?」

 ヴィラがそう訊ねてくる。

「多分、魔力を籠めるこのバトンに仕組みがあるんだよ。魔力といっても、マナの形は人によって少しずつちがうから、三人がただ魔力を籠めていっても、うまくいかない。他の二人の魔力についても考え、自分の魔力の使い方を変化させることが勝利の条件、ということだ」

 ボクがそう説明する。ボクは魔力をつかえるので、バトンに何となく吸われる感じがある。

 このバトンから何かの仕掛けがありそうだ。基本、この競技は走った秒数と、バトンに籠めた魔力の重ね合わせで、総合的な点数が決まる。走りながら魔力を籠めるのも難しい。

 つまり動きながら魔法をつかうことを想定し、さらにその魔力を効率的につかうことが求められるのだ。

 ただ、まだボクらは一年生なので、魔力を籠められる人はそれほど多くなく、単純な走力勝負でもあって……。

 その中でもエミリアやフィーネ、ロナといった貴族組は頭一つどころか、だいぶ抜けている。

 それは元々の魔力量もあるけれど、小さいころから鍛えられていた影響が大きいのだろう。


「しかしエミリア様はすごいね。どんな競技でも一番」

 ヴィラもため息をつく。それはボクとエミリアが付き合っている、と分かった上での言葉だ。

「マナのつくり方がうまいんだろうね……」

 ボクも苦笑しつつ、そう応じる。大体、二番手はロナで、三番手がフィーネとなることが多い。ロナはお付きの二人とチームを組んでおり、周りがロナをうまくサポートする形をとるのだが、フィーネはお付きのミスミとは別チームだ。

 エミリアは一人でも魔力量が抜きんでるし、足も速い。同世代の女の子の中では背も高い方で、優位ではあるのだけれど、彼女は貴族の娘としてきちんとトレーニングもしてきたのだろう。

 魔法の成績も優秀、運動神経もいい、頭もよくて、心遣いもできる……偽装でなければ、恋人同士なんて誇らしい限りなのだけれど……。

 いよいよ、ボクたちの走る番だ。

 ボクたちのチームはいつもドベの辺りで、あまりよい成績はのこしていない。それはメロもヴィラも、まだ魔法がつかえないので仕方ないし、二人とも運動神経は悪い方だ。メロは体重が影響しているし、ヴィラも文学少女タイプで、運動をしてきた感じはない。

 ボクは足が速い方だけれど、それだけで二人をカバーすることはできない。

 でもバトンを先生に返すと「あら?」と不思議そうな表情をする。

 バトンに魔力を吸われる感じがあったので、もしかしたらボクの魔力がバトンに移ってしまったのかもしれない。危ない、危ない……。でも、そのときはそれだけで済んだ。


 その日、ロナから呼び出しをうけた。

 ロナはお付きの三人と寮の部屋も一緒であり、この辺りは融通も利く。

 ボクは朝風呂と偽って、いつもより少し早い時間に部屋をでて、ロナたちの部屋へとやって来た。

「まだやりたいのか?」

「ふふふ……。いいじゃない。こういうことは楽しまないと」

「ボクは楽しみたいわけじゃないんだけど……」

「何を言っているの。とある文献にはこうあるわ。〝男性は、興奮すると陰部を大きく、固くし、女性へと挿入しやすいようにしていた〟ってね。私たちに興奮しているのでしょう?」

「男性は、女性よりも興奮しやすいんだ。男性側がしかけて、女性と関係するような体の構造なんだよ」

「言い訳はいいの。あなたが体育のとき、メロさんと密着しているのをみて、みんな居てもたってもいられなくなってね」

 それはこの部屋に入ったときから気付いていた。彼女たちはもうはじめていた。その匂いがする……と。

 一回したら、二回も三回も同じ……とはなりたくない。でも、彼女たちからすればそうなのだろう。しかもそれは、禁断の蜜の味なのだ……。女性同士では得られない快楽――。

 もちろん女性同士の方がいい……という人もいるだろうけれど、奥まで届く感覚はまた別のはずだ。

 侍女であるメラル、エム、サリの三人はもう我慢できないとばかりに、ボクに飛びついてきた。

 エミリアに操をたてよう、ということでもないし、シャルに悪い、ということでもないけれど、ボクとしては肉体だけの関係に、何となく抵抗を感じている。

 それでも体は素直だ。かわるがわるキスをされ、膨らんできた胸を揉みしだけば、ボクも大きく、固くなってくる。

 メロとボクをみて、したくなったのなら……。ボクは三人にバックからすることにした。

 女性同士でするときは、ほとんどない態勢に、彼女たちは最初に驚き、そして受け入れた。

 メラルは少し下付きなので、後ろからだと具合がいい。エムは元々、未成熟なところもあって、後ろからだとキツさが際立つ。サリはやや斜めから行く感じだ。

 ロナは三人がイクと、ボクにまたがってきた。

「エミリアとのキスは気持ちいい?」

 どうやら、ロナはボクとエミリアとの関係の方が気になるようだ。

「君には関係ないだろ?」

「あら? つれないわね。でもこんなことはまだでしょう?」

 そういって彼女はボクの上にのり、自ら動きだす。ボクが男だと知ったら、エミリアはどう思うのだろうか? ボクはロナの動きに合わせながら、そんなことを考えていた。




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