夜明けの散歩(お題:猫、砂時計、夜明け)
僕は、部屋に置いてある秘密の砂時計の前に立つ。A4ノートほどの大きさで、大きめだ。上面にも底にも月のマークから右矢印が太陽のマークを指した絵が描かれている。
倉庫の奥にひっそりと置かれていた砂時計。その砂時計をひっくり返すと、一時間だけ猫の姿になれるのだ。ただし、絵が表すように、夜から朝に変わる時間帯しか効果は現れない。どうやら、誰かに姿が変わる所を見られるリスクが少ない時間帯にしか使えないようだ。
早起きが苦手な僕は、その砂時計を使える機会も多くない。けれど、受験勉強ばかりで苦痛になってくると、一時間の散歩が気分転換になるので、たまに使わせてもらっている。
猫の姿になると、人間なら登れない屋根の上や狭い道、塀の上を伝って走れる。それが爽快で楽しい。さらに、素早く動けるので、思っているより遠くまで行ける。
一時間で帰って来れる場所へ散歩をするのが、僕の秘密のマイブームなのだ。
今日は久しぶりに早起き出来たので、砂時計をひっくり返した。みるみるうちに猫の姿へと変わる。
窓から飛び出した僕は、颯爽と屋根の上に飛び乗り、駆け出した。今日は近所の高台の上を目指すのだ。時間がないので、なるべく最短ルートを選んで走った。
人間の姿では息切れする坂道も、猫の僕なら軽やかに駆け上がれる。
まずい! 空が明るくなってきた。急がないと!
慌てて向かったおかげか、なんとか間に合った。
高台に着くと、人間なら柵越しに街全体を眺めることごできる。だが、猫の姿になり、そばに植えられている高い木のてっぺんまで登ると、そこからは街全体とともに遠くに海が見える。猫にならないと海は見えない。だからこそ、僕だけの特別な時間になるのだ。
その海から、ゆっくりと太陽が昇り始めた。オレンジ色に輝く太陽は、力強く光を放ち、その神々しさに、なぜか元気がもらえるのだ。
しばらく眺めて元気をもらい、急いで帰る。
模試の成績が悪く落ち込んだ時、こうして太陽を見て帰るのだ。なんとなくだが、日の出と共に明るくなる空や、朝の澄み渡る空気が僕にエネルギーをくれるのだ。
家に着く頃には、時間切れでまた人間の姿に戻るだろう。今日見た太陽の輝きを胸に、また勉強を頑張るのだ。
次は、模試でいい成績を取って、気分よく日の出が見れたら最高だと思うから。
三題噺集 茶野鈴子 @mykaku55
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