「魔法なんて、あるわけがない」
そう信じていた。
ウィッチと呼ばれる有淵カイカは、女子だけの学園で自由気ままに過ごしていた――誰にも言えない、見えるものとできないことを抱えたまま。
それは、キス。
興味はある。けれど、どうしてもできない。
まるで呪いのように、それだけは心の奥底に引っかかっていた。
そんな彼女の前に、十年ぶりにその子が現れる。
黒く、静かな瞳をした転校生・黒渦ムミ。
かつて、公園で交わしたキス。
そして、その直後に聞いた言葉――
『女の子同士でキスをしちゃだめ。だって、魔法が始まっちゃうから』
忘れていたはずの記憶が、日常に裂け目を生む。
魔法なんてないはずの世界で、確かに始まった何か。
これは、触れられなかった想いとかけられた呪いのその先を、もう一度見つめ直すための物語。
有淵カイカは女子高の二年生。背が高い美人で口もうまく、人気者だったが、人気がありすぎて別名「ウィッチ」というあだ名で呼ばれ、人を魅了して石にする、などと恐れられてもいた。
実は本人はいたって普通の人間であるし、人並みにキスにも興味がある。
ただ、カイカには人には見えないものが見える。
黒い外套を羽織り老婆の仮面をつけた人の影。それらは取り留めもないことをしゃべったりする。教室内にもたくさんいるそれらを、カイカは「魔女」と名付けた。
その魔女たちは、時折カイカに話しかける
『有淵カイカは、キスに興味がある。でも、できない』
ある日、転校生がやってくる。カイカは彼女を知っていた。
黒渦ムミ。
彼女こそが、カイカがキスできない原因を作ったからだ。ムミが転校してきてから次々と不可解なことが起こり始める。
感想:女の子同士のキスは魔法がはじまっちゃう……そんな甘酸っぱい謎が、謎を呼ぶ不思議な物語。
オススメです🧙♀️