2☆ 流星になって⋯
ビューン!ビューーーン!!
ビビューン!ビュビュビューーーーン!!
(⋯私も⋯惑星とともに消滅した⋯?ここは⋯天国か?⋯⋯はっ!)
気がついたら⋯⋯流星になっていた⋯。隣や後ろを見ると、同じように流星が飛んでいた。どうやら我々⋯多くのギリリッシア神達は⋯惑星が消滅した瞬間に、流星に姿を変えられ飛ばされたようだった。
『動け!』と念じれば、多少は動けるようだが⋯強制力が働いているらしく⋯自身では軌道修正は、出来ない状態。
「ゼス⋯なぜ⋯流星になってるの?」
「わからん⋯」
「父上⋯俺達どこに向かってるんだ?」
「わからん⋯」
「どこに行くのかしら?」
なぜ流星に変わったのか⋯どこに向かっているのか分からず⋯ただただ不安な気持ちで流れに身をまかせた⋯。
しかし⋯時間が経つうちに、宇宙空間を一緒に飛んでいた仲間達は⋯一神また一神と消滅して脱落していく者が増えてきた。
「ゼス⋯私もうダメだわ⋯飛んでいられないわ⋯消えそう⋯はぁ⋯」
「ヘラ⋯私の懐に入りなさい」
力の弱い者は、神力も体力も続かない。そのため、孤立して長時間は飛んでいられなかった。流星に変えられても、やはり力が強くないと、宇宙空間では耐えられないようだ。
「わ⋯私もダメだ⋯」
「おいおい⋯ヘル⋯お前はまだ大丈夫だろう?」
「アレス兄さん⋯私の自慢の一つは⋯体力がない!だ⋯」
「ガハハ!俺の懐に入れ!」
「えっ⋯アレス兄さんの胸の中は⋯ちょっと⋯」
「なら消滅しろ⋯」
「消滅したくないから!入ります!入ります!」
すべての弱い者を助けたいが⋯どんなに力が強くても、守れる数には限度がある。一神か二神が限界だ。
残っている者たち⋯皆で助け合いながら⋯宇宙空間をひたすら飛んでいた。
その間⋯私ゼウスナーは⋯流星になる前の事を回想した。
流星に変わる前ーーー
年中咲き誇る花々、どこまでも続く小麦畑。木々は青々と茂り、時折花吹雪の如く雪が降る。
春・夏・秋・冬すべての四季が一度に交じり合いながら成り立っている奇跡の星。寒くもなく暑くもない⋯
常春の惑星【ギリリッシア】
私ゼウスナーは、世界の守護神としてギリリッシアの頂点に君臨していた。
妻ヘラーダ、長男アレスター、次男ヘルメスト、三男アポロンド、長女アルテミスティ、次女アテナーシャの七神家族。
(ちなみにアポロンドとアルテミスティは双子の兄妹だ)
私の姉アフロディーティアと姉の旦那ヘパイストスナとは家族ぐるみでの交流が盛んで、特にヘラーダととても仲が良い。
その他にも⋯私の兄神や多くの神が存在する。神達は、それぞれ土水光風火の五属性に分かれており、惑星と人々を守護し、導く役目を担っていた。
私ゼウスナーは風属性だ。大気を自在に操り、世界中を駆け巡り平和を維持する。
ギリリッシアは、自然豊かな大地と戦争のない平和な惑星だ。
しかし⋯その平和は壊された。邪悪神連合軍【
ーーー
ある日突然、上空に大きな宇宙船が現れた。神々も人々も『あれはなんだ?』と上空を見あげて、その宇宙船を見ていた。
その日は【ギリリッシア祭】が開催された日だった。ギリリッシア祭は、ギリリッシア全大陸で一斉に開催される収穫祭だ。
神々も人々と一緒に祭りを祝う。全宇宙では【神は人間界に干渉しない】が一般的だが、ギリリッシアは違う。
【みな仲良く平和に暮らそうギリリッシア】
⋯のキャッチフレーズを掲げて、神々と人々が一体となり、助け合っていた。
ギリリッシアに住む者⋯神々も人々も⋯争いが嫌いな平和主義。そして、とてものんびりした性格。そのため、人間界では大小の諍い事はあるが、戦争は起きたことがない。
そんな惑星にあらわれた宇宙船⋯。
宇宙船を見上げること数分後⋯指揮官らしき者の拡声音が、惑星全体に響き渡った。
『我々は、邪悪神連合軍【
その宣言の直後に多くのリンゴンゴが宇宙船より落ちてきた。
《ポン!ポン!ポン!ポン!ポポポン!》
『こりゃ~うまそうなリンゴンゴじゃのう~』
『とても艷やかリンゴンゴだ』
『すべすべしてるね!』
「でもすごく硬いな⋯爺さん、これは歯が折れるぞ!」
『ふぁふぁふぁ~アレスター神しゃま!わしゃ~歯がにゃいから食べられんぞふぃ!』
「ははは!そうか!」
などと⋯のんびり落ちてくるリンゴンゴを眺めていた。その時⋯
《皆さん!それはリンゴンゴではありません!時間が経つと爆発します!ケガや命を落とす危険があります!今すぐ逃げてください!》
我が愛娘アテナーシャ女神が、神託を与えるように皆の脳内に警告した。
ギリリッシアでは、戦争がないので、破壊兵器も存在しない。『爆弾だ!』と宣言されても⋯落とされても『なんじゃ?こりゃ?』だった⋯。
そして⋯突然のアテナーシャによるリンゴンゴが爆発する⋯という
『何???』
『きゃーーーーー⋯っ』
『わぁぁぁーーー⋯』
『早く逃げろーー!』
『ボケ老人!早く捨てろ!何を持って歩いてるんだ!爆発するぞ!』
『ほへ?』
アテナーシャの警告を聞いた神々も人々も、次々と空から落ちてくるリンゴンゴ型の爆弾に右往左往!
慌てて転ぶ者、押して押されて動けない人々⋯逃げ惑う大混乱が起きた。
この事態を一度鎮めなければと思い、私は避難を促した。
「全大陸の人々よ!慌てず近くの神殿の敷地内へ避難しろ!下位の神々は人々の誘導を!」
「『「はい!ゼウスナー様」』」
「その他の神々よ!神殿に神力で結界を張れ!」
「『「はい!人々が避難した全神殿に結界を!」』」
私ゼウスナーも惑星全体に響き渡るように風に声を乗せて指示を出した。 私の指示のもと、皆が一斉に行動した。
負傷した者はいたが【死亡者ゼロ】で、何とか皆無事に避難が完了した。結界を張った神殿の敷地内には、不安を抱えた人々でひしめき合っていた。
少しでも不安を和らげようと、ヘラーダが炊き出しをし、人々を励ました。眠れないという者には、アポロンドが音楽で癒しを与えた。
少し落ち着いてきた時を見計らい、神々の住む島に全民を移動させた。
一カ所に集めると狙われやすいが、全土に分散すると、結界の効力が弱くなるので、仕方なかった。
その間⋯我々神達は、これからどうするか話し合った。ギリリッシアには【
ーーーーーーーーーー
※ギリリッシアでは⋯アップル⋯りんごの事を【リンゴンゴ】と言う。
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