ぜんぶ花粉が悪い

香久山 ゆみ

ぜんぶ花粉が悪い

 あの夢を見たのは、これで9回目だった。

 夢ばかり見ている。

 ここ最近、連日のようにサイトに作品を投稿している。こいつ一体何している人なんだ、暇人か、と思われているかもしれない。が、幸か不幸か閲覧者が少ないため、そんな疑問を持つ人もいない。私はひとり朽ちていくのだろう。あの夢のように。

 夢ばかり見るのは寝てばかりいるからだし、寝てばかりいるのは家に引きこもっているからだ。そして、家に引きこもっているのは、ひとえに花粉のせいだ。

 先週から花粉の飛散がひどい。

 なのに、陽気に誘われうかうか外出してしまった。薬も飲んだし、マスクもしてた。けれど、半日もたず、目はしばしば、鼻はずるずる、くしゃみも止まらない。それで急ぎ帰宅し、以来自室に籠城している。

 窓の外では、春一番のつもりか風がびゅうびゅう吹いている。

 隙間から入ってくるのだろうか、家の中でもくしゃみが止まらない。仕方ないから家でもマスクをしている。でも鼻水が出る。頭がぼーっとする。仕方ないから、布団を頭からかぶる。それでようやく平穏な状態を取り戻す。

 こんなにひどい症状は初めてだ。

 だいぶ花粉を吸い込んでしまったのかもしれない。

 うつらうつらする眠りの中、妙な夢を見る。体からにゅるにゅると植物の蔦や枝のようなものが生え出して、それがすっぽり自分を包む。そうして、その植物は私を栄養にしてどんどん大きくなっていく。取り込まれた私はもう跡形もなく、そこには一本の木が残るだけ。

 本日は雨である。

 明日は花粉の飛散も落ち着くだろう。

 けれど、私はもうここから動けそうもない。夢を見る間に、すっかり布団に根を張ってしまったみたいだ。

 植物の雄しべから飛び出した花粉は、雌しべに受粉することで種を作る。吸い込んだ花粉は、私の中で種となり、そのまま植物として成長していくのだろう。

 さようなら。植物になってしまっては、これ以上はもうどんな言葉も届けることはできないかもしれない。

 けど、大丈夫。

 代わりに届けるものがある。杉花粉を受粉した私は、たくさん寝て、きっと立派な杉の木になります。そうして皆に春の訪れのような黄色く愛らしい花粉を届けるだろう。風に乗って、どこまでも遠くまで。

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