〇望の日々のはじまり
藤泉都理
〇望の日々のはじまり
あの夢を見たのは、これで9回目だった。
あんなにもあの夢を見ないように眠る前、安眠体操及び夢を見ない為のお呪いダンスをあれほど心血注いで行ったというのに、見てしまったのだ。
絶望である。
私の星では同じ夢を9回見ると、現実になってしまうのである。
これから私を待ち受けるのは、緊張感と苦難に満ち満ちた日々である。
私が一時的に時間を停止できるという能力を持っているが為に、私は野蛮な生物しか闊歩しない地球に送り出されるのだ。
地球は恐ろしい星だ。
周知の事実である。
侍という野蛮な生物が、刀という野蛮な武器で以て、あらゆる生物を切り殺してしまうのだ。
いかな、星の授業でもう地球は武器を捨て去り平和な道を進んでいると学ばせようが、政府が地球は生物も自然も美しい星なので旅行に行こうと勧めてこようが、誰も信じる事はない。
だから星長がいかに、あなたたちは侍という生物を誤解している、高梨という一人の侍は刀で隕石や宇宙ゴミを木っ端微塵に切って地球を守る尊く貴い生物だと諭そうとしても無駄である。
(何が、高梨が高揚した精神を抑えきれず地球の建築物や自然も木っ端微塵に切り捨ててしまうので、あなたが時間を一時的に止めて精神安定部屋へと運ぶのですよ。ですか。もう睡眠弾も電気ショックも効果がなく高梨を止める事ができない、高梨本人も苦しんでいる。ですか。私は信じませんよ。はあもう。私の星と地球が宇宙協定なんて結ぶからいけないのですよもう)
そう、絶望していたのに。
地球にはもう侍という生物は一人しか居ないと知った。
否。一人、というよりも、一体、と数えるのが正確だろうか。
侍を模したAIロボットである高梨が地球に襲いかかる隕石や宇宙ゴミを、とても長い刀で以て木っ端微塵に切り捨てていた。
いくらプログラムを修正しても、隕石や宇宙ゴミを切り捨てた後の攻撃的な性格は抑えきれないのだという。
君が来てくれなければ廃棄するはずだったからよかった。
次の最高傑作ができるまでよろしく。
高梨を作った者が言った。
宇宙に一緒に行きましょう。
信じられない事に私は、行かぬと拒む高梨を無理矢理宇宙船に入れて地球から飛び出していた。
9回も見たあの夢のように。
〇望の日々のはじまり 藤泉都理 @fujitori
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
同じコレクションの次の小説
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます