月めくりエッセー Jul.夏の記憶
山谷麻也
自然から学んだもの
◆七つ道具
ゴムぞうり、半ズボン、ランニングシャツ、麦わら帽子——。
これだけ
筆者の場合、釣り
◆自然教室
となりに一級上の男の子がいた。
夏休みに入ると、朝寝坊している筆者を起こし、裏山へ虫取りに出かけた。
クヌギの木に昆虫が群って蜜を吸っている。幹を蹴ると、バラバラとクワガタやカブトムシが落ちてきた。
大きな、形のよいものだけを選び、虫かごに入れた。家に持ち帰る。どんな風に遊んだかは覚えていない。
こんなことをほぼ毎日やった。
村を流れる谷にも、釣り竿を持って遊びに行った。カワヨシノボリを釣った。獲物はたいてい鶏のエサにした。
学年が進むと、ウナギなども狙った。タコ糸に針を結び、ミミズを刺して浸けておくと、かかった。朝早く、クモの巣を払いながら、仕掛けを回収して回った。
◆身の回りは危険がいっぱい
蜂にはよく刺された。ヘビにもよく出くわした。たまにマムシも見かけた。しかし、マムシに噛まれたという話はあまり聞いたことがなかった。よくぞゴムぞうりで歩いたものだ。
子供たちはマムシとヘビの見分け方を知っていた。成長するにつれ、いつしか覚えたものだ。
毎年、二千人くらいがマムシに
過疎化が進み、野生動物が
◆遠ざけるより適度な距離
昔、親は一日中、子供を見ている余裕などなかった。そのため、子供たちは自然の中で生きる知恵を身に付けた。
生家の近くの村は危険な場所が多いことで知られた。
大人たちは
「あそこに行ったら、お化けが出るぞ」
などと脅した。
結果、たくさんの恐ろしい妖怪が誕生した。
知り合いの姉は幼い頃、川で溺死したらしい。恐ろしい妖怪がいる、とされた川だった。
近寄るな、と言われても、子供は好奇心を抑えきれない。いたずらに遠ざけるのではなく、適度な距離を保つ。これが安全教育の基本ではないかと、経験上、思う。この夏、悲惨な事故の報は聞きたくない。
月めくりエッセー Jul.夏の記憶 山谷麻也 @mk1624
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