アカデミーでの試験

俺は急いで家に帰った。


『お母さん!俺ってアカデミーに入学してたっけ?』


咄嗟に変な質問をしてしまった。だが、それよりもアカデミーに入学しているという事実が本当かどうかを確かめたくて、言葉を止められなかった。


「あんな、本当に頭どうかしたんじゃないの?

あなたは今年からアカデミーに入学したじゃない。

あ、あと、明日はアカデミー休みじゃないから気をつけてね。」


母はそう言った。


『だ、だよね〜』


俺は適当に流したが、この事実を整理するのに時間がかかった。

情報を整理し、一旦落ち着くと、アカデミーの存在に心が躍った。


新星、アカデミー——どれも楽しそうなことばかりだ。


……楽しそうだな。


そう浮かれていた。


翌朝。

俺はアカデミーの制服に着替え、母に挨拶をした。


すると、妹が顔を出し、「一緒に登校しよう」と誘ってきた。


アカデミーの場所も分からない俺にとって、妹について行くのが最適だと判断し、素直に頷いた。


妹について行きながらふと思った。


((妹のフリーナって絶対モテるよな))


なぜなら、フリーナは美しい水色の髪と瞳で、肩ぐらいまである髪がサラサラで1本1本が自我を持っているように動いている美しい美少女だからだ。

そんな美少女が妹だなんてにわかに信じ難い。


そう思いつつ、フリーナが口を開く。


「今日は待ちに待った模擬ダンジョン攻略だよ!」

妹は目を輝かせ、弾むような声で言ってきた。



『なんだ、それ?』

俺は軽く首を傾げた。聞き慣れない単語に、思わずキョトンとしてしまう。


「お兄ちゃん、知らなかったの?」

妹は呆れたようにため息をつきながらも、すぐに説明を続け始めた。


「2人でダンジョンを攻略する連携と個人の実力を試される試験のことだよ!」

妹は熱く語ってくる


『へえ、そんなのがあるのか。』

俺は腕を組みながら、興味なさそうに相槌を打つ。


「お兄ちゃん、大丈夫? なんかやる気なさそうだけど。」

妹はじとっとした目で俺を見つめる。怪しむように顔を近づけくる。


『いや、そんなことはない。やる気満々だ。』

俺は明らかに棒読みでいった。


「絶対ウソじゃん。」

妹はぷくっと頬をふくらませ、不満げに口を尖らせた。


「でも、ここでいい結果を残せば眷星に指名されるかもしれないよ?」


『なんだって?』

急に話が変わったので、驚いてしまった。


「だから頑張ろ!」

妹はニッと笑い、拳を突き出してきた。


『……じゃあ、尚更頑張らないとな!』

俺も苦笑しながら拳を合わせる。やる気が湧いてきた

今の実力も試したいしな。


するとアカデミーについた。

広大な敷地にそびえ立つ壮麗な建築物。高くそびえる白亜の塔が象徴的で、空に向かって伸びるその姿は、まるで知識と力の頂点を目指す者たちを導く灯台のようである。


校門をくぐると、広々とした石畳の中庭が広がり、中央には歴代の英雄を象った大理石の彫像が並ぶ。その周囲には整然と手入れされた庭園があり、風に揺れる花々が彩りを添えている。


((すごい綺麗じゃないか。))


目の前の光景にあっかんしつつ、歩みを進める。

俺は妹と大きな体育館で他の人を待っていた。

体育館の中には総勢1500人弱の生徒が集まっていた。


「はいみんな〜今日は模擬ダンジョン攻略ですよ〜」


そうステージの真ん中に立つチワワのような可愛い顔とほんわかとした雰囲気を出している先生が言った。


「今からチームとなるペアをくじ引きで決めるわよ〜

じゃ〜みんな1列並んでね〜」


そう言うと皆が1列に並び、くじを引く。

引いた輩は一喜一憂してる奴もいれば落胆しているやつもいる。


「よっしゃ!俺は既に眷星がついてるやつとペアだ!」

そう生徒のひとりがいう。


確かに、仲間が強ければ有利に進められるのは事実だ。しかし、これは連携力と個々の実力を試す試験。仲間に頼りきりでは意味がない。自分自身が結果を出さなければ、本末転倒だ。


そんなことを考えていると、俺の番が来た。


手にしたくじには——


『セレスタ・ルナ』


そう書かれていた。

紙に書かれた名前の人物を探していると、後ろから落ち着いた声が響いた。


「貴方がミハド・アラクスさんですか?」


振り向くと、そこにいたのは一人の少女だった。


『そうだが……君がセレスタ・ルナか?』


「えぇ、そうよ。これからチームとしてよろしくお願いします。」


なんとも礼儀正しい。貴族の子女かと思うほど、品のある言葉遣いだった。


そして、目を奪われるほどの美貌。


黒い髪に、ブラックホールのように深く吸い込まれそうな瞳。背丈は160cmくらいか? しかも、俺のタイプの貧乳ときた。


つい視線が胸元へと向かう。


「アラクスさん? そんなにじっと、どこを見ているのですか?」


不思議そうに問いかけられ、俺はハッとする。


『……なんでもない。ただ背丈などを確認してただけだ。』


焦りを悟られぬよう、自然に返した。

すると、周囲からガヤガヤと騒ぐ声が聞こえてきた。


「おい、嘘だろ? あのルナがあんなやつとペアなのか?」


「くっそ、あいつら上位入賞確定じゃねえか!」


次々に不満げな声が上がる。耳を澄ませると、ある情報が入ってきた。

どうやら彼女は既に星と契約を交わし、眷星となっているらしい。しかも、新入生の中ではトップクラスの実力者——エリート中のエリートだ。


そして今回の模擬ダンジョン攻略。クリアしたダンジョンの難易度に応じてランキングが決まり、上位入賞者には報酬が出るらしい。


そんな試験で彼女との模擬ダンジョン攻略。

彼女一人でも十分に攻略できるこの試験で、周囲が羨むのも無理はない。


「それでは、みなさ〜ん。各自ダンジョンのポータルの前まで行ってくださ〜い!」


先生の掛け声とともに、体育館の壁に巨大なポータルが出現する。生徒たちは次々とその前に集まっていった。


「じゃあ、これから模擬ダンジョン攻略をスタートするわよ〜! 各自、ポータルの中へ入っていって〜!」


号令と同時に、生徒たちは一斉にポータルへと飛び込んでいく。


『じゃあ、行くかルナ。』


そう言って歩き出すと、彼女の元気な声が返ってきた。


「はい! 頑張りましょう!」


そして俺たちは、光輝くポータルの中へと足を踏み入れた。





  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る