告白
rdrs
完結編
ある朝、俺はいつも通り学ランに着替えて高校へ向かった。
高校に着いたら、俺はまたいつも通り下駄箱を開ける。
すると、そこに一通の手紙が入っていた。
「放課後、屋上で待ってます。」
細い文字で、その一文だけが書かれていた。
もしかして、俺は告白されるのか?
いや、俺に限ってそんなことはありえない。
きっと誰かのいたずらだ。そうに決まっている。
だけど、やっぱりあの手紙の事が忘れられなくて、今日の授業はマトモに受けられなかった。
一体どうしちゃったんだ、俺…!?
────そして、放課後。
俺は屋上に向かった。
何を期待しているんだろう、俺は。
どうせ禄でもない事が待ち受けているのに。
少し鼓動が速くなっている。
落ち着くよう自分に言い聞かせながら、屋上の扉を開けた。
屋上では、俺と同じ制服を着た見知らぬ生徒が待っていた。
小さな背丈や艶のある髪。そして整った顔立ち。
その姿を一目見て、俺は一瞬で恋に落ちた。
???「やっと、来てくれましたね。」
俺「あ、あなたは…?」
???「ああ、すみません。私は西園寺という者です。」
俺「…そ、そうなんだ。」
西園寺「あの…実は私、ずっと前から…ダン先輩の事が大好きでした!!」
俺「…へ?」
西園寺と名乗るその少女は、勇気を出して愛を告白した。
きっと何かの間違いだと、思った。だって…
────俺の名前はたるお。ダンさんとは全く無関係の人物だ。
屋上に、ちょっときまずい空気が漂う。
きっと彼女は、必死に勇気を出して告白したに違いない。
それがこんな結末で終わってしまうなんて、少し可哀そうだと思う。
だけど、それでも、俺が今やるべき事は一つ。
勇気を振り絞って、言葉を紡ぎだすんだ…!!
たるお「ごめん、西園寺さん。俺はダンさんじゃなくてたるおなんだけど…これって間違いだよね…?」
西園寺「いえ、間違いじゃないですよ?」
たるお「??????」
ちょっと状況を理解できない。
たるお「えーっと、つまりあなたが好きなのは”ダンさん”で、されど俺を呼び出したのは間違いじゃないんだ?」
西園寺「はい。そうですよ?」
じゃあ、一体どうしてダンさんじゃなくて俺が呼びだされたんだ…?
たるお「ダンさんの下駄箱と間違えて、俺の下駄箱に手紙を入れたとか…?」
西園寺「いえ、違いますよ。あの手紙は最初からたるおさんの下駄箱に入れるつもりでした。」
たるお「??????????」
────必死に頭を回転させる。考えろ、俺。この難解な謎を解き明かすんだ。
たるお「…もしかして俺の名前を”ダンさん”だと勘違いしてた?」
西園寺「ははっ、そんなわけないじゃないですか~。あまり調子に乗らないでくださいよ。まったく、これだからオタクってやつは…」
たるお「???????????????」
なんか今、さらっと悪口を言われた気がした。
だが、そんなことよりも今の状況が理解できない。
たるお「えーっと、つまり、西園寺さんの好きな人は本当に間違いなくダンさんで、でもあの手紙で呼び出そうとしたのは間違いなく俺って事…?」
西園寺「だから、さっきからそう言ってるじゃないですか。もしかして、そんなこともわからないくらいバカなんですかぁ~?」
たるお「……。」
いや、わかんねえ。何もわかんねえ。
今、自分が置かれている状況も。なんでこいつがこんなに煽ってくるのかも。
俺は目の前にある全ての事柄が、遂にわからなかった。
たるお「あのー、つかぬ事をお聞きいたしますが…なんで俺を呼び出したんですか…?」
西園寺「えー、なんでって、告白する為ですけど?」
たるお「でもあなたが好きな人は俺じゃなくてダンさんなんですよね?それなら俺じゃなくてダンさんを呼べばいいと思うんですよ。何故(なにゆえ)に俺を呼んだのでありますか?」
西園寺「それはね、あなたがダン先輩を狙っていると聞いたからだよ。」
たるお「????????????????????????」
どこにそんな出鱈目な情報が転がってると言うのだろうか。
俺はダンさんについては顔と名前くらいしか知らない。その顔と名前も、どっかの写真で見かけて知っただけで、直接会ったは一度もない。
そもそも俺は男だ。心も体も男だし、別にゲイとかでもない。なんでそんな俺がダンさんを狙うと思われてるんだ。
たるお「あなたは俺に宣戦布告をする為にここへ呼びつけた、ということでございますか…?」
西園寺「はい、そうですよ~?」
たるお「でも俺、あの人と会ったこと一度もないし…そもそも男なんだけど…」
西園寺「私だってあの人と会った事は一度も無いし、男ですよ。」
たるお「…え?あなた男なんですか?」
西園寺「まさか気付いてなかったんですか?この高校は男女で別の制服を着ることになってるから、一目でわかると思うんですけど?」
たるお「ハッ…!そういえば…!!」
【回想】
ある朝、俺はいつも通り”学ラン”に着替えて高校へ向かった。
(中略)
屋上では、”俺と同じ制服”を着た見知らぬ生徒が待っていた。
【回想終わり】
たるお「うわあああ、ほ、本当だぁ!?」
西園寺「性別も、親密度も、関係ないんです。私のダン先輩に手を出す奴は例え誰であろうと…」
???「ちょっと待ったぁぁぁーーーーーー!!」
話に割って入るように、何者かが叫びながら屋上の扉を勢いよく開けた。
たるおと西園寺「「誰だお前は!?」」
???「私は百合子よ!西園寺さんに手を出す不届き者を成敗しに来たわ!!」
西園寺「え、私?」
百合子「たるお!あんたに西園寺さんは渡さない!!私だって、西園寺さんの事が好きなのよ!!」
たるお「え、俺!?」
たるお「いや、そもそも西園寺さんが俺をここに呼んだのであって…」
百合子「西園寺さんがあんたなんかを好きになるわけがない!!」
たるお「うぅっ、そんな…」
さらっと貶された俺はその場で崩れ落ちた。
西園寺「でも私が好きなのはダン先輩で…」
百合子「あんな人が西園寺さんのことを好きになるわけがない!!」
西園寺「うぅっ、そんな…」
さらっと貶された西園寺さんはその場で崩れ落ちた。
百合子「西園寺さんのことがわかるのは私だけなの!西園寺さんは私だけ見てればいいの!!だから私と…」
???「ちょっと待ったぁぁぁーーーーーー!!」
話に割って入るように、また何者かが叫びながら屋上の扉を勢いよく開けた。
西園寺と百合子「「誰だお前は!?」」
???「俺はダン。」
西園寺「だ、ダン先輩!?でも、どうしてここに…?」
ダン「俺がここに来た理由は一つ。…百合子、お前を追ってきた。」
百合子「えっ、私?」
ダン「実は俺…ずっとお前のことが好きだったんだ。」
百合子「ごめんなさい!私は西園寺さん一筋で…」
西園寺「ふざけないで!!ダン先輩は私のものだ!!」
百合子「西園寺さんがこっちに来た!いぇーい!」
ダン「西園寺!貴様に百合子は渡さないぞ!!」
西園寺「ダン先輩!目を覚ましてください!!」
百合子「ダン!あんたに西園寺さんは渡さないわ!!」
ダン「百合子に殴られた!?親父にもぶたれたことないのに!?」
もう、何がなんだかわからない。そして、俺は完全に蚊帳の外だ。
揉み合いになっている様をよそに、俺はこっそり帰ろうとした。しかし…
???「ちょっと待ったぁぁぁーーーーーー!!」
何者かが叫びながら屋上の扉を勢いよく開けた。
たるおと西園寺と百合子とダン「「「「誰だお前は!?」」」」
???「俺は異世界からやって来た闇の魔王。まず手始めに貴様らを俺の下僕にし…」
西園寺「ダン先輩は誰にも渡さない!!」
百合子「西園寺さんは私だけのモノ!!」
ダン「百合子は俺のもんだ!!」
魔王「ちょっと…あのー…」
たるお「なにこれぇ…。」
魔王「あっ、ちょっとそこのあなた…」
たるお「あ、俺はもう帰りますね。」
魔王「えっ…そんな…」
全員に無視された魔王はその場で崩れ落ちた。
~完~
告白 rdrs @ole-ole-Orange
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