後編 不幸な少年と寂しがり屋の妖狐の最後

「夜見・・・どこに居るの・・・夜見・・・。」

「ここに居るぞ・・・浩一・・・。」

世界が狭まっていく。

もう、この世界は消えるのだろう・・・。

「夜見・・・僕、一人は嫌だよ・・・。」

「安心せい・・・妾達は例えこの身が朽ちようともずっと一緒だ・・・。」

あれから数十年の月日が経った。

子供だった浩一も今では老いて、その寿命もわずか・・・。

「夜見・・・僕、君と出会えて・・・君と愛し合えて・・・幸せだった・・・。」

しわくちゃになったその手はもう妾の力を握る力もなかった。

それは妾も同じだった。

「妾も幸せだったぞ・・・人の子と・・・浩一と夫婦になることが出来て・・・本当に・・・。」

妾は土地神だ。

信仰を失えばその身を保つことは出来ない。

今までは彼が私を想っていてくれたから存在を保てていたがそんな彼が亡くなれば・・・。

「でも、悪くない・・・。」

愛するものと共に消えることが出来るというのはなんと幸せなことか・・・。

「生まれ変わっても妾達はまた夫婦に・・・。」

「・・・うん、絶対に君を・・見つける・・か・ら・・。」

瞼が閉じる。

愛する人の命が終わる瞬間悲しみはなかった・・・だって・・・。

「妾もすぐそちらに行く・・・。」

妖狐の姿は光の粒子となって消える。

彼らの世界は静かに崩壊するのだった。


ここは夫婦が永遠の誓いを立てる神聖な儀式場。

多くの人に祝福を受けながら新しく一組の夫婦が誕生した。

「綺麗だよ、夜見・・・。」

「アナタもカッコいいよ・・・浩一///」

彼らの出会いは本当に運命と呼べるほどのモノだった。

出会った二人は順調に愛を育み、時にはケンカもしたがその程度では二人の絆は途切れなかった。

「君を永遠に愛すると誓うよ、夜見///」

「私も浩一を永遠に愛すると誓います///」

二人はもう何度目かわからないキスをする。

でも、そのどのキスよりも特別なモノになった。

夫婦となるための契り・・・参列した多くの親族や友人たちに祝福の拍手を受けながら永遠の誓いを立てるのだった。

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不幸な少年と寂しがり屋の妖狐 わっしー @kemkem9981

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