ラストシーン
椿 恋次郎
ラストシーン
あの夢を見たのは、これで9回目だった。
のこってる記憶は冷たい雨に心まで熱を奪われる感覚と、止めどなく溢れる涙の熱だった。
夢だと言うのに……いや、夢だからこそ風化せずに苛ませるのだろう。
見つかるのは千々に引き裂かれた感情の欠片ばかり。
たぶん、拾い集めても肝心の部分は見つからないんだろう。
のこってるのは自信の無い疑問。
はたして僕の選択は合っていたのだろうか。
こんな事ばかりが頭に渦巻くばかり。
れいせいに考えれば間違っていたのだろう。
でも、あの頃の僕はどんなに君に泣かされても静かに涙を流すのが最善だと、そして改善されいていくものだと信じ切っていた。
9年間に積み上げた関係は、おそらくは何処かで歪んでしまっていたのだろう。
回想しても、どこでボタンを掛け違えたのか分からない。
目をつむれば、君との日々は全て思い出せると言うのに。
だから最後は篠突く冷たい雨の日、やたらに寒かったあの日の
――――っと……ずっと!どうして涙を流しながら黙って受け入れ続けるのよ!――――そんな風に君が叫んでる声が、聴こえた気がした。
たしかに涙を流しながらも受け入れ続けた僕はそんな自分に酔っていて、瞳が涙で曇ってしまった事で君を余計に傷つけていたのかも知れない。
君が僕に涙を流させたのは分かってるよ、どんなに冷たい雨の日でも
そして料理を始めてから10年目、僕は初めて自分の強がりを認め、自分を変える事を決心する事が出来た。
そう、ゴーグルをする様になったんだ。
君は……玉ねぎは冷水にさらせば目に染みにくいってのを試しても、あの日の僕はそれでも涙を流してしまったから。
換気扇の下で切る、レンジでチンしてから切る等々……
他にも色々試した上で最後の挑戦だったんだけど、それがピリオドになった。
あれが僕達のターニングポイントだったんだね。
君が僕に涙を流させたのは分かってるよ、どんなに冷たい雨の日でも
I know you made on me tear no what cold rain day cool kind may do to
あの夢を見たのは、これで9回目だった。
ラストシーン 椿 恋次郎 @tubaki_renji
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