全てがあおいこの世界は
ゆゆゆ
序章
日本は、いや、この街は水に飲み込まれた
なぜそうなったのかは僕も分からない。地球温暖化の影響で水位が上がったのだろうか。最近続いていた暴雨のせいだろうか。
しかし、僕にとってそんなこと知ったこっちゃない。僕は日本の都道府県が五つしか分からないくらいには頭が悪いし、今はアパートに閉じ込められているので外界の情報が分からないのだ。だが昨日から約3センチ上がった水位は、いくら頭の悪い僕が、この状況に置かれてても異常なことくらい分かる。
そんなことをうつらうつらと考えながら、暖かい日差しがさす窓から外を眺めると、春風にあおられたブランコが微かに揺れている。そのブランコは座る板下の部分のギリギリまで水が迫ってきている。明日にはあの座る板の上まで水位が上がるだろう。せっかくだから最後にブランコでも漕ごうか、という結論に至り僕は椅子から腰をあげた。
僕は自分の膝下まである水を裸足でじゃぶじゃぶと音を立てながらブランコにたどり着く。赤いブランコをみると以前幼なじみと遊んだ記憶が蘇ってくる。僕はそんなブランコを漕ぎながら少し状況を考えてみた。
今、僕はアパートの中にいる。このアパートは他の建物と違って少し建っているところが高い。眼下には完全に沈んでいる戸建ての住居達が並んでいる。そしてこの水は昨日どこからともなく現れてこの街を飲み込んだ。地震は起きていなかったから津波ではないだろう。もし津波だとしてもこんなに水が澄んでいるのはおかしい。透明な水は僕の足元にあるシロツメクサ達を包んでいる。そして、僕以外の住民はみんな避難したらしく、昼寝から目覚めたらアパートが静まり返っていた訳だ。親と妹はちょうど中学校の授業参観だったらしくそのまま中学校にいるだろう。ここから1番近い避難指定場所の中学校でも6キロは離れているから助けが来るのは遅くなりそうだ。水位は3センチずつ上がり、外界との手段もない。この七階建てのアパートは単純計算でも700日後に完全に沈むだろう。しかし、実際の問題、食料などのことを考えると僕がここで生きれる時間は700日よりも少ないだろう。
食料は申し訳ないが他の部屋からパクって食べればいい。排泄物はボトルにいれとき、風呂はここで水浴びをすればいい。ガスも電気も使えないがまあどうにかなるさ
これから僕は国の人が助けに来るのを待っとけばいいかと適当に考えブランコから降り、水をかき分けて部屋に帰った。
全てがあおいこの世界は ゆゆゆ @yuyuyuyuyuyuyuyuyu
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