第2話

「ピー。ピー。」

音が聞こえる。なんの音だ?

「何処だ...ここは?」

そっと目を開ける。すごく眩しい。

近くに人がいたみたいだ。なんだかすごく騒がしい。何処かに人を呼びに行った。


「明石彰人さん。聞こえますか?」

名前を呼ばれた気がしたから「聞こえますよ」と答えた。体を起こそうとすると、

「動かないでください。安静にしていてください」

男の人にそう言われた。

ようやく眩しさが減り目をしっかりと開けることができた。知らない天井。知らない男の人と女の人。『医者っぽい格好をしているな。ここは病院か?』

「そうですよ。ここは病院で、私は医者です」

何故俺がここにいるのか、状況を理解するのには時間がかからなかった。

今は何時だろう。


問診をしているとドアの方から女性が入ってきた。何故がもうすでに泣いている。

「ぜん“ばい”...よ“がっ”だ...ぼん“どう”に“よ”がっ“だ...」

「そんなに泣くなよ。そういえばあの時突き飛ばしちゃったけど大丈夫だったか?」

「わ”だじの“ごどばい”い“ん”でず。ぜん“ばい”だい“じょう”ぶでずが...?」

「今のところ問題ないみたいだ。って言うか泣きすぎて何言ってるかわからないぞ笑」

「う“ぅ”...だっ“で...だっ”で...」

「わかった。わかったから。一旦落ち着こう。」

「ばい”」


10分ほど経っただろうか。泣き声がなくなり部屋が静かになった。


「落ち着いたか?」

「はい。すみません。ありがとうございます」


女後輩。名前は「橘咲希(たちばなさき)」だ。

あの日一緒に飲みに行った子だ。

あれからどれくらいの時間がたったんだろうな。


「問題なさそうですね。念の為後日詳しい検査をしましょうか」

静かになった部屋で、医者がそう言って部屋から退出していった。あっさりしているな。

でも10分弱、何も言わずただただ見守ってくれていたようだ。いい先生だな。

後日っていつなんだろうな。

てか今日は何日だ?


「先輩、本当に体は大丈夫なんですか?」

「あぁ、問題ないよ。少しだるい感じはするけどほとんど違和感がないぐらいだ。」

「本当ですか!本当によかったです。」

「心配かけたな」

「いえ、元はと言えば私が悪いですから。私がもうちょっとしっかりしてれば先輩が怪我する事はなかったんです。すみません」

「そんな事ないぞ?悪いのはあの男だ。」

「それはそうなんですが...でも...」

「お前が罪悪感を持つ必要はない。俺はこうやって生きてる。それだけでいいってことよ」

「でも先輩には感謝してもしきれません。」

「大丈夫だって。俺が行動した事なんだから全然問題ないよ。てか仕事はどうしたんだ?」

「仕事...あぁすみません。先輩が寝ている間にすごく大変なことが起こったんです。今からそれを説明させてください」

「大変な事?何だそれは?」


なにが起こったと言うのだろうか。

なんだか嫌な予感がするな。

俺はどれぐらい寝てたんだろう。



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