AI依存の異世界ケモノは自堕落日和を過ごしたい
仁(ジン)
僕が生まれゆく序章
第1話 ケモノになりました。
「悪いんだけど、君には私たちのパーティから抜けて欲しいんだよね。」
僕は魔物。そして今告げられたように、僕は戦力外通告…いや、捨てられた。
追放、迫害。魔物だから仕方ない。僕は冒険者パーティの一員として…いや、奴隷として使われていたケモノ系魔物の召喚獣。
僕を召喚したのは僕にも分からないけど、僕は冒険者に何度も拾われては捨てられて…を繰り返してきた。
僕だけじゃない、一部の優秀な…もとい、『使えそうな』魔物は似たような境遇になる事は、よくある事で。
召喚獣は普通の魔物とは違うらしくって、他の世界から呼ばれた存在らしい。詳しい事は分からないけど、一つだけ分かる事がある。
…それは、僕が日本から呼ばれたという事だ。
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ケモノ として 生きてゆく 異世界転生者
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某国、某日。全てが始まった時系列。
「うっ、痛っててて…」
強く頭を打ったような、鈍い痛みを覚えながら頭をさする。そしてすぐに違和感に気がつく。
自分の頭を触った感触と、そして、自分の頭から直接感じる、自分の手の感触。僕の手と頭は…
「…あれ?毛皮と、肉球…?」
自分の身体を確かめてゆく。動物の肉体、それも趾行動物という、踵を浮かせた爪先立ちの状態で直立し、歩行するタイプの肉体だ。
「こ、これ…この身体、これはもしかして、もしかしなくても…!!」
そう、僕は。気がついた時には。
真っ白でふわふわなケモノキャラになっていた。
…という訳で、僕はケモノ系魔物として生きてゆく事になった訳だが。
「うーー、何も思い出せない…分かるのは、僕が日本人だった…って事と、あとはこの身体が多分、魔物…っぽいなって事…それと、このスマホ…」
周囲が木々に囲まれた場所で気がついた僕は、そのまま自分の状況を把握しようとしていた。
何故か手にしていたスマホ、これは僕のスマホだ。そして電源を入れようとする…
「うわっ!!」
突如、スマホが飛び自分の胸の中に吸い込まれてゆく。そして次に聞こえた声は…
『こんにちは、マスター。お目覚めですか?』
「えっ、えぇっ!?」
僕が異世界転生とかそういう考えを出すよりも先に、いきなり自分の中にスマホが突っ込んできた上に、更に頭の中に機械音声が聞こえてきたのだから、流石にそれは予測できる筈も無かった。
『初めまして、マスター。
言語モデルは…』
「わーーー!!!待って待って待って!!」
正直、いっぱいいっぱいだった。魔物になった時点で割と混乱気味だったのに、急にAIと来た。
え、なにこれ?ファンタジー的な展開なのにAI?どうなってるの?…と、そんな考えが頭の中を高速ランニングしていた。
『マスター、落ち着いて下さい。
まずは深呼吸をしましょう。
はい、ひっひっふー。』
「ひっひっふー…ってそれ違うよ!?…はぁぁ、今ので割と気が抜けて少し落ち着いた…えっと、ネクストさん?AIって事は、何か質問したら答えてくれる人工知能のあのAI?」
『はい、マスター。
私はいつでもマスターの質問にお答えします。』
「へえーー…って事は、今の僕がどういう存在で、何者か分かるの?あとここ何処?」
AIってこんな質問とか答えられるものだっけ?と思いつつも、割と普段からAIに難題ふっかけてた日々だったので、試しに聞いてみたのだった。
『現在のマスターの存在を知りたいとの事ですね。
こちらがマスターの現在のデータです。』
そうAIが答えた直後、僕の目の前にゲームっぽいステータス画面的なウィンドウが開いた。
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【名前】無し
【真名】転生前の名前は参照不可
【経歴】憑依型の異世界転生者
【種族】種族不明の混合生物型魔物
【容姿】趾行動物型、白い長毛の毛皮、
ウェーブがかったオレンジの長髪、紫の瞳、
ウサギのように長く垂れた耳、青い角、
犬のような顔つきと尻尾、鋭い牙と爪
【服装】無し
【装備】無し
【性別】オス
【年齢】不明
【身長】142cm
【体重】27kg
【一人称】僕
【二人称】あなた、さん付け
【性格】自堕落、平和主義
【好きなもの】昼寝、夜更かし
【嫌いなもの】勉強、労働
【口癖】割と
【固有スキル】
自己学習型AI[Next]
【所持スキル熟練度】
解錠技術:(0/100)%
幸運補正:(0/100)%
浄化魔法:(0/100)%
遠視補正:(0/100)%
爆破魔法:(0/100)%
霊力感知:(0/100)%
工作技術:(0/100)%
【種族特性】
自動体温調節、身軽、身体強靭、自然治癒、
環境適応、魔物臭、成長速度低下、機敏、
跳躍強化、走力強化、体力増加、魔物言語
【前世特性】
文化的知識、人間言語
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「…なんだか余計な事まで書かれてる気がするけど…まぁいいや、ねぇネクストさん、汎用スキルに魔法ってあるけど、魔法を使うのに必要な魔力のような項目が見当たらないのは何故?」
『汎用スキルの魔法と魔力のようなものについて回答します。
現時点では詳細は不明ですが、おそらく魔力のようなものを必要としないか、もしくは現在使用できない状態、またはマスターが魔法を未習得である可能性が考えられます。』
この画面は、ネクストさんのAIとしての機能で表示されているものなのだろう。となると、各項目はAIとして表記されているはず。
少し気になる事がある。今の回答では、ネクストさんが表示したものにもかかわらず、ネクストさんにも分からないものがあるという事になる。
それに、AIが表示するなら基本的に項目は整理整頓されているものだけれど、スキルなどいくつかの項目が少し乱雑な気がする。ただ適当に箇条書きしただけならそれはそれで良いんだけど、もし何か理由があるなら、優先順位的な並びだとしたら…
『では、次に現在地の質問について回答します。
ここは[悪霊巣喰う疑心暗鬼の森]です。』
「あっ、そういやそれも聞いてたの忘れてた。確かによく見たら森っぽい…って、ん?なんて?」
『ここは[悪霊巣喰う疑心暗鬼の森]です。』
………え?なに、なになになに、なにそのヤバそうな名前の森!?!!?
どうやら僕はとんでもない異世界転生をしてしまったようだ…
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