砂漠の夢

敷知遠江守

 あの夢を見たのは、これで9回目だった。

 今月見た他8回と同じ、砂漠で一人彷徨い歩く夢。


 中学生時代の私はとにかくやたらとこの夢を見た。

 起きても、あの風に吹かれてできる砂紋を思い出して身震いする。


 今日は砂漠の夢じゃないと思っても甘い。

 普通に街中を歩いていて、自分が触った部分がボロボロと崩れて、気が付いたら一面砂漠になっているなんていう夢も見る。

 周囲にいた人は砂に飲まれ、気が付けば誰もいなくなっている。

 ただ一人、自分だけが広大な砂漠を歩いている。

 生き物は何もいない。

 四方八方、目に見えるのは砂漠、そして砂紋。



 小学生時代は、よく追いかけられる夢を見た。何が追いかけてくるのかよくわからないが、とにかく何かが追って来る。その対象はゴジラのような巨大な怪獣だったり、何か大きな影のようなものだったり。

 とにかく怖い。

 暗い中に隠れてやり過ごそうとするのに、なぜか見つかったり、すぐ目の前の地面が怪獣の重さでへこんだり、影に飲まれたり。

 これが、どういわけか絶対に逃げられないのだ。



 しばらく砂漠の夢も追われる夢も見なかったのだが、ある事がきっかけで再度見るようになった。

 追われる夢では対象というのは子供の頃とは全然違っていた。

 血まみれの刃物を持った無表情な女性だったり、死神のような真っ黒い存在だったりに変わっていた。

 夢の終わりはいつも同じで、ただただ逃げて、体力が尽きて観念して逃げるのを諦める。

 砂漠の夢は中学生時代と同じで、ただただ喉の渇きを訴え、誰か助けてとひたすら願う。時には砂地獄のような穴に引きずり込まれ、もがき苦しむという事も。



 子供の頃はよくわからなかったが、かつて、「それいけココロジー」という番組をきっかけにして、心理ゲームや夢占いというものが流行った時期があり、このやたらと見る二つの夢について調べた事がある。

 追われる夢は過度なストレス、不安、脅迫感、砂漠の夢は孤独、絶望、死を意味するらしい。


 ある日、両親に毎晩のように変な夢を見ると相談した事がある。

 すると父は枕の下に数珠を置けとアドバイスしてくれた。さらには、近所の可睡斎という寺にも連れて行かれた。

 思えばそこから変な夢を見なくなった気がする。

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砂漠の夢 敷知遠江守 @Fuchi_Ensyu

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