スカウトは10日間

いまい あり

スカウトは10日間

あの夢を見たのは、これで9回目だった。

こんなことは誰にでもあることじゃないだろう。

同じ様な夢を見るのは何かの予兆なのか?


ようはベッドから半身起こしたまま、今の自分の状況を確認した。いつもと変わらない日常。いつもの部屋。制服もカバンもいつもの位置に置いてある。昨晩もいつもの時間に就寝していつもの時間に起きた。何一つ変わらない中で夢だけがおかしい。吉兆なのか不吉なサインなのか、夢の内容を思い返してみても全く意味が分からない。


最初の日の夢は

「さぁ!早いもの勝ちだ!」

まるで商店街の呼び込みみたいな言葉だ。早い者勝ちとは?何のメリットがあるのか理解に苦しむ。


2回目の夢。

「ここに住みたきゃ今のうち!」

住むだって?住宅のCMか?でも俺は今の生活に何の不満もないんだ!


3回目は「今なら住処も服も家具も選び放題!」

4回目には「充実した日々はここから始まる!」

5回目は「まだ決心はつかないのかい?」


はぁ?今の俺には美人の彼女もいるし、成績も上々。一流大学を卒業して有名企業に入るエリートコース間違いなしの人生から外れたくない!


6回目「セイレイ商会は貴方を待っている!」

7回目「さあ、こちらに来る決心は出来たかな?」


高学歴確約の俺が【セイレイ商会】なんて無名の企業なんかに入社しないよ!

そんなもの俺には必要ないんだよ!


8回目「決心は、まだかな?まだかな?」

これまでと少しトーンが違うが同じ夢だ。何故同じ夢だと思うのか?夢の中から聞こえる声が同じのだ。声のトーン、口調を思い出すとどう考えても同一人物だ。


そして今日9回目。

「期限は明日まで!」

だから明日までにどうすりゃいいんだよ!意味不明な夢に苛立ちを覚える。


期限の10回目。

「庸、おめでとう!。千年に一度の人間が精霊になれるキャンペーンに当選しました!今日から精霊として活躍してくれたまえ!」


 精霊?なんでだ?俺は人間の世界で順風満帆な人生を約束されているんだ!

なのに、なんでいきなり精霊にならなきゃならないんだよ!冗談じゃない!

人間に戻してくれ!


「この後、お前の人生は真っ暗闇なんだよ。それより精霊の方が楽でいいぞ!」

精霊のヌシは庸を引きずっと雲の奥に連れて行った。

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