第8話

厚化粧はまずいから今のどすっぴんでなおかつ笑顔なももちゃんは最高にかわいくて舐めがいがあった。

「セブン!おいで!散歩行こ!」

ももちゃんはアイドル活動を少し休止することとなった。絶頂の人気を誇っていたももちゃんは今や犬好きの23歳。まだまだ若い。俺よりもずっと。


「久しぶりに公園に行って夜の散歩でもしようか。」ももちゃんのその一言で俺と清子ちゃんとももちゃんの三人で出かけた。

「冬に、ましてや夜なんて出歩くもんじゃないわよ」

「お母さん知らないの?冬は星が綺麗に見えるんだよ」

「家の中から見えるじゃないの」

「寒い空気の中で見るのが風情があるの!」

公園のベンチに座り込む二人と服を着せられてそのままお座りさせられる俺。

「綺麗だねえ」

「綺麗でしょ、だって今日は新月だもん」

「…?それが何か関係あるの?」

「満月の時、月が明るすぎてその周辺にある星は上手く見えないけど、新月の時は私たちを照らすのは星の光だけなんだよ。星がよく見えるの。ほら、オリオン座でしょ、ベテルギウスでしょ、おおいぬ座のシリウスでしょ、子犬座のプロキオンでしょ…」

「あー、もうわかんないけど、とりあえず今日は星がよく見えるってことね。」

「そういうこと。春になったら…」

「なったら?」

「教えない。また一緒に来て見ようよ、そのときに教えてあげる」

「えっケチ。今教えてくれてもいいじゃないの。もしかして寒くなったから帰るの?」

「…別に?」

「絶対そうじゃん!だから家で見ればよかったのにー!もう、家帰るよ、ほらセブン」

ももちゃんに連れられて俺も立ち上がる。どうせ帰りに肉まんでも買って食べながら帰るんだろうなと思いながら。ちなみに俺はよく覚えている。春になったら北斗七星がよく見える。それは北音の名前の由来であるとともに俺の名前の由来でもある。

北音がももちゃんを惚れさせたように俺もももちゃんを惚れさせることができるだろうか。いや、できなくても安らぎを与えられるかもしれない。俺はももちゃんのアイドルでもあって、アイドルは笑顔を届けるのが得意なのだから。

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相互アイドル @mizukiuka

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