第6話

ももちゃんは最近忙しい。それは悪いことじゃない。うん、いいこと。多分。おやつだってちょっと高級なやつになってる、多分。


でもおやつが高級になればなるほどももちゃんはいない。安くなればなるほど清子ちゃんがたくさん与えてくれる。

最近は清子ちゃんの独り言しか聞いていない。


「今日カレーとハヤシとどっちだったらお父さん喜ぶかな?」と言って99.9%カレーを仏壇の前に供える清子ちゃん。


「桜でも見に行く?」と遠くまで散歩するのかと思いきや、近くの店の桜色のリードが可愛すぎて衝動買いでそのまま帰宅する清子ちゃん。


二週間ぶりに実家に帰ってきたももちゃんは相変わらず俺の毛が好きみたいで。俺に顔を埋めさせて寝てしまった。かわいい。ちょっと重かったりもする。でもかわいい。


雨が降り始めそうなのに何も言わず散歩しようとする清子ちゃんを止めようとしたら、「今日は命日なの!」と言う。うつむきながら涙を流す清子ちゃん。


「こんにちは!ロジバレの村瀬百子です!今日はよろしくお願いします!」朝番組で笑顔を見せるももちゃんを見てホッとしているのか心配しているのか分からない表情をする清子ちゃん。


嫌がる俺を楽々と抱き上げて動物病院に連れて行く清子ちゃん。健康診断なんていらねえだろ。


一つ季節が過ぎ去ってしまったんじゃないかというくらい顔を見せなかったももちゃんが急に実家に帰ってきたと思ったら一日中寝てしまった。厚化粧が似合ってないももちゃん。


「もうすぐオリオン座の季節になりますね」急にやって来た北音は開口一言目にそう言った。「子供が生まれるんです。星好きな親なので星にちなんだ名前にでもしようかと思ってて。そしたら、百子も星好きだったよなあって思い出して。もう本当に雲の上の存在ですけどね、最近の活躍といったらもうそれはそれは」

「ありがとう。でもわざわざそれを言いに来たわけじゃないでしょう?」清子ちゃんは痛いところを突くのがうまい。多分俺の爪が長い時よりもずっと。

「鋭いですね。俺は満月よりも新月の方が好きなんです」


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