相互アイドル

@mizukiuka

第1話

オリオン座がよく見える冬の空の下で、彼女は散歩するのが好きだ。お気に入りの白いコートにマフラー、ニット帽、マスクをして出かける。もはや不審者だが仕方がない。彼女は目立つのが嫌いなのだから。そして極度の寒がりなのだから。散歩に行かなければいいじゃないかという話だがそう単純なことでもない。彼女曰く俺のために散歩しているらしい。言っておくが、俺は別に太ってはいない。むしろ標準体重。 本当はただ彼女が星空を見たいだけっていうのもわかってる。そう言えばいいのに言わないところもかわいいのさ。

近くの薄暗い公園で夜空を見上げては俺に星のうんちくを教え込み、満足したら足早に帰る。彼女のルーティーンはいつもそれで、毎日散歩に行けるほどの心と時間の余裕はあった。

ところが最近彼女は忙しい。仕事で上手くいっているということで祝福するべきなのかもしれないが、いつしか彼女が他の男に行ってしまいそうなのが気に食わない。俺という最高のボディーガードがいるというのに。


「行ってくるね、セブン」

気をつけるんだぞ!

「ワン!」

ほらね、俺の言葉じゃ伝わらない。ももちゃんはアイドルなんだから俺が守ってあげなきゃいけないのに。

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