こちら星の海魔法開発局(第三支部)(現在工事中につき南ゲートからは入場不可です ご迷惑をおかけします)

@po_ka_mann

北に行く話(報告書)

鈍色の宝石が埋め込まれた革手袋が棚の中にある黒い装丁の背表紙を指でなぞり、腕に積まれた資料の塔を更に高く積み上げていく。

「基礎研究は十二時までに終わらせろよ」

後ろの方からかかる声にわかってる、と返しながら青年は足早に木の廊下を歩いていた。

身に纏うのは赤と紫のビロードで編まれた意匠の美しいローブと、銀の懐中時計。

後ろから追って横に並んだ友人がやけに苦虫を噛み潰したような顔をしているので、青年は肩をすくめてため息と一緒に吐き出すように告げた。

「わかってる。昼休憩の間しか時間はないんだよな?」

「午後は試薬融解とバッファー作成、次の実験の準備が待ってる。終わるのに2週間って話だったのに結局3週間近くかかった、その上…」

「夕方に主任が来る。だろ」

友人は神妙に頷くと眉を顰めながら声を顰めた。「リニーウナ主任の噂ならお前も聞いてるだろ。実際に顔を合わせるのはこれが初めてでも…」

「星の女王*だろ」*現代日本の言葉に変えるとすればクレオパトラの意

「完璧主義者だ。こっちは共同で使う器具の清掃をヘトヘトになりながらやるって言うんだぞ、細胞精製に使う魔法杖がどれだけ苔生しやすいか知らないんじゃないのか?」

午前の内から既に顔に疲労を滲ませている友人の資料の上に自分の取った本を何冊か重ねると青年は苦笑した。

「噂の通りか違うのかはともかくとして、無駄口を叩いている暇は無いだろうな」


中央南区魔法開発局第三支部、対策魔法部門は正規の魔法使い達、派遣魔法師に関わらず多くの生物で溢れかえっていた。



◆1◆



さて、時計の針は進んで午後4時になる。

まだあどけない面影の残る少女は自身の眉間を中指で捏ねながら手元の書類を見下ろしていた。赤紫のドレスに下げられたのは開発局の職員証である銀の懐中時計だ。

「32ページ」

青年はその声を聞いて来たか、と身を正した。主任研究員リニーウナと横に連れそう探査局の男は今彼の目の前に座して研究データを確認している。

「二次データ分析に漏れがありますね。でもそれ以外は問題無いかと。ここに来てすぐとは思えませんね、素晴らしい成果ですね」

そう微笑んだ彼女の言葉につい安堵のため息が漏れる。

「〈26区〉開拓プロジェクトは順調ですよ。ある一点を除いて」

その言葉にリニーウナの羊皮紙を捲る手が止まった。「ある一点」と繰り返す彼女に青年は鷹揚に頷いて言葉を続ける。一応は困ったというていで話してはいるものの、その様子はさながら他人事だ。

「プロジェクトは25区の研究所と協力して進めていましたが、向こうのプロジェクトリーダーが死亡して以降の連絡に著しい遅れが見られます。引き継ぎ自体上手く行っていないのではないかと対魔…ええと……こちらの部門の方では噂に」

そう答える青年の言葉に今迄黙っていた探査局の男が口を開いた。

「困るだろうなぁ」

リニーウナが男の方を僅かに一瞥して頷く。

「〈26区〉の開拓は現在魔法省が所有する土地情報を大きく更新する事になる調査プロジェクトです。この世界における未踏の土地は彼等探査局が筆頭となり調査を行ってきました。それは彼等が実際に現地に赴き、目で見て土地を知り、現地の生物や人に触れその生き方を学んできたからですね。」

書類を捲り、文字に目を通す動きを止める事なくリニーウナは微笑して続けた。

「26区に関する研究が最も進んでいるのは間違いなく25区の魔法使い達ですね。プロジェクトリーダーの引き継ぎがどうなったのかについての確認と、今後の連絡、研究報告の調整、どうにかできませんかね?」

「やれる事は此方で全部やりましたよ。後はもう現地に向かって研究所の方に確認を取るくらいしか…」

これで今は見逃してくれないだろうか、此方も向こうに人を送る余裕なんて無いのは知っている筈だ………そう言った期待を込めて言った青年の言葉は好奇に満ちた男の声に阻まれ、打ち消された。探査局の男が、椅子から立ち上がり緩く目を細めて笑っている。

「それは良いな。向こうはまだ行った事がない、25区だろう?絶壁の合間から26区の"瞳孔"が見えると聞いた事はあるが」

「ルー、今から向かうんじゃ数ヶ月はかかりますよ?私達が向かう間に問題は解決するかも」

「構わんよ、此方は向こうと違って連絡手段は揃っている」

2人が勝手に話を進めていくのに青年は焦りを露わにしながら割って入った。このままでは研究主任が数日の間にまた遠方へと飛び去ってしまうのだ。せめてあと3週間は此方に留まってもらいたい。

「主任、失礼ですが…」

「いずれは解決しなければいけない問題は、今解決した方が良いと思いませんかね?」

幼い少女の風貌に削ぐわない穏やかな微笑みには、青年に有無を言わさぬ圧力があった。

「我々中央は25区から大きく離れた場所に位置しています。遠くから見れば大した事が無いように見える問題で、ひとつのトラブルを除き整然と整ったように見えたとしても、近くで見ればそうでないのかも」

この時点で青年の頭の中にある考えはただ一つ、

────ああ、余計な事さえ言わなければ。

これひとつのみだった。


「25区はどの方角ですか?」

「…………中央からイェレル鉄道を介して真っ直ぐ、最北です。」










大柄の成人男性用の制服が帽子をとり深々を頭を下げた。

「今回はイェレル鉄道をご利用頂き誠に有難う御座いました!!!!!!!!!!!!!!またのご乗車をお待ちしているぜェ!!!!!!!」

鉄道員の挨拶に軽く手を振り返すリニーウナは耳栓をつけたままである。彼女の後方から北の地へと降り立った探査局員の男はあたりを見渡してから軽く欠伸をして彼女を抱き上げた。


探査局員のルーは2m近い人型の容れ物を使用し移動するミミックの一種である。リニーウナは彼に対して小柄だ。普通に隣に立って歩けば彼の腹程度の位置に頭がある為、風の吹き荒ぶ北の地では会話もままならない。

普段通りといった様子で彼の腕の中に収まったリニーウナは駅の魔光掲示板を眺め、白く柔い息をひとつ吐いた。

「ここが25区ですか」


探査済地域において現在最北とされる土地、25区は細かい霧雪で白く霞んでいるがそれでも巨大だった。灰と青の家々には幾何学模様の装飾が施され、道は新たに整備されている。

宙に浮く黒のランタンが点々と続くその先には天にも届く程の崖が聳え立ち、僅かに裂けるようにできた亀裂からは巨大な霊長類の瞳孔が覗いて見えた。あれが26区の瞳孔だろう。

「研究所は裂け目の麓だな。飛ばされるなよ」

肩を揺らしてわざとらしく笑うルーの様子を見て、頷きながらリニーウナは身を屈めてくしゃみをした。



◆2◆



「こんにちはー、魔法対策部門でーす」

頭についた雪を軽くはたきながらリニーウナはルーの腕から降り、北ガパレ25区研究所へと入っていった。

受付で開発局である旨を名乗りながら銀時計を見せていると、奥の方から白と紫の外套を羽織ったスノーヒューマンの男が現れた。まだその種族で見れば年若いように見える彼は受付からシュイン、と呼ばれている。

「中央からこんな所まで申し訳ない」

申し訳なさげに眉尻を下げながらそう告げると、彼は研究室の方を見やって2人を奥の方へと案内した。


「構いませんよ、現在のプロジェクトリーダーに会わせていただいて、それで25区研究室の現状把握ができれば此方としては問題ありませんからね」

遠出用の身の丈に合わない大きさの杖を抱えながらリニーウナは緩く首を振る。それに対してシュインは少し口を歪めて笑って返した。

「俺です。この研究所での26区開拓プロジェクトのリーダーは…………」

少し言葉を詰まらせながらもそう告げた彼をまじまじと見て、リニーウナは僅かに驚愕した。

この調査プロジェクトの最先端をいく25区の研究室、及びプロジェクトチームに割り当てられた予算と人員はかなりのものだ。このまだ年若い青年が引き継ぎを任されたという事は、彼にそれなりの実力があってのことか、もしくはなにかしらの事情があってなのだろうか。

「すみません」

身を縮めて萎縮する若者の様子にようやく我に帰ったリニーウナは軽く咳払いをした。

「いえ、失礼しました、それでは現在の研究データを見せていただいてもよろしいですかね?前回お伝えした通り報告が必要でして…」

「準備は整っています。此方に」


席につき、一連の研究成果と調査資料をまとめた物に目を通したリニーウナは小さく成る程、と呟いた。

居心地悪そうに目線を彷徨わせるシュインの様子に対して、実際研究自体は何の滞りもなく進んでいる。中央にこのデータを送れば何の問題もなくプロジェクトは進展し、26区に箒乗り達が探査に向かうだろう。

だがリニーウナの呟きの理由はそれだけではなかった。資料の中には前任のプロジェクトリーダーであるカラナン・ウォスの名前が記載されている。ルーもリニーウナの資料を上から覗き見るようにしていたが、シュインの胸元を………正しくは、胸元に下げられた職員証の青銅のタグを見てから合点がいったというように納得した様子を見せた。

「シュイン・ウォス。前任はお前の父親か」


◆3◆


「父のプロジェクトを引き継ぐ事に他の方々は反対しませんでした」

「そうでしょうね。引き継ぎ後の研究データにも問題のある点は見られませんでした。しかし連絡を怠るのはいただけませんが」

シュイン、リニーウナ、ルーの3人は26区の瞳孔が覗く裂け目の側まで来ていた。麓からは川が増え、幾重にも水の帯が折り重なるように連なっている為に船で上流へと登る。流れは比較的穏やかで川は広く澄んでいる。時折小さな流氷が流れてくる以外は穏やかなものだった。

「ご迷惑をおかけして本当に…」と言葉を繋ぎつつも、シュインの表情は晴れない。

ルーはその顔を一瞥してから景色に視線を戻すと「まどろっこしい。問題が何かあるならさっさと伝えれば良いだろう、前任の死因はなんだ?」と冷めた様子で尋ねた。リニも彼の対応を軽く手で諌めはしたもののおおよそそれに関しては同意である旨を伝えた。

「私達は25区の研究を予定通り進める為、みなさんに協力をしにきたんです。プロジェクトについて困っている事があるなら力になれるかもしれません」

シュインはリニの案じる様子に僅かに微笑んだ。

「…前任のプロジェクトリーダーは突然死でした。死因はまだ詳しくはわかっていない。最後に父が回収した調査機が故障したままなので、それの修理に向かうのですが…、詳しくはそこで」

シュインはその後も2人の言葉に耳を傾け、緩く何度か頷きはしたものの船を降りるまで口を開く事は無かった。


26区の開拓プロジェクト研究室本部は亀裂の目の前にあった。シュインは2人を案内すると曇りガラスに透けてうつる瞳孔をじっと見つめながら、

「前任者はここで倒れていました。26区から帰ってきた、故障した初号調査機を抱えて」

そう伝えて、ひと呼吸おいてから「今日はもう遅い。26区の目が閉じられれば眼球の光の反射に照らされたこちら側は夜になる、2人とも上にある部屋で休んでいただけたらと思います。連絡は明日故障を直して、調査機のデータと一緒に提出します」と疲れた顔で微笑んだ。


結局その日はそのまま夜になり、リニーウナとルーの2人は長旅の疲れもあり休む事になった。シュインは2人のためにそれぞれ一部屋ずつ寝室を用意したがリニーウナがルーのベッドに無理矢理入り込み眠ったため部屋は一つしか使われずに済んだ。

次の日の早朝、シュインが欠伸を噛み殺しながら調査機の修理に研究所へと足を踏み入れると、既に机の上に何枚かの書類を並べ調査機を机に今固定しようとしているリニーウナと目が合った。

「あら、お早いんですね。研究所は随分静かですから25区の皆さんはちゃんと睡眠を取る方達ばかりだと思っていたのに」

そう言いながら設置を終えた彼女に訝しむような目線を向けてシュインは隣の席についた。

「眠れませんでしたか」

「いえ、むしろ逆ですね。昨日は疲れて普段よりずっとはやく寝ついてしまって、ルーを置いて少し先に起きてきました」

「ああ、探査局の…………」

「本当は西の方へ探査の仕事があったんですけれどね。私が無理をいって先に伸ばしてもらって此方について来てもらったんです。彼自身も26区に興味があったみたいですからね」

そう言いながら機器を所定の位置に据えると、リニーウナはシュインの方へ向き直った。

「貴方は眠れなかったんですね」

自身の目の下を指で軽くなぞりながらリニーウナは微笑む。隣に座る青年の顔にはくまができており、それを目敏く指摘された事に対してほんの少し気まずそうに彼の表情が曇るのがわかった。

「細かい調整は調査機の製作チームが行うのでしょうが、親機になる杖への接続までのセットアップまでならお手伝いができます。開発局の方にあった資料でおおよその構造は把握しているので………少し、触ってもいいですか?」

「壊したりさえしなければ…」

「そこまで乱暴な扱いはしませんよ。私の杖で見られる所を少し見るだけ。貴方もその気でここに来たんですよね」

首を縦に振るシュインに「では共同で」と穏やかな調子で伝えると、リニーウナはそのまま作業を始めた。


黙々と調査機を触っていると、しばらくしてルーも研究室に現れた。

「随分と早いなァ。なんだ、わざわざ手伝っているのか」

「はやく終わらせればその分はやく休めますからね。それに報告もこれが直らない事には」

ルーは少し呆れたような笑みを溢しつつ向かいの棚から何個か資料を漁りパラパラと目を通すとリニーウナのすぐ隣まで来て顔を耳元に寄せる。

「少し25区を見て回ってくる。正午には戻ってくるつもりだが、何か土産でもいるか?」

「甘い物があったら買ってきてくださいね。その頃には調査機も製作チームに届けられるようになってると思いますから、杖で連絡をして」

軽く頷いてそのまま2人に背を向けて去るルーを眺めながら、シュインは何故か非常に肩身の狭いような思いに苛まれた。部屋を彼が去った後も作業は続いたが、その時に機器を弄りながらリニーウナに

「お二人はどういったご関係で…?」と様子を伺いつつ尋ねたが、返事が来る前に彼女の様子でなんとなく答えは察せられた。

耳まで赤くしながら視線を彷徨わせたリニーウナは

「同僚で、その、お付き合いをさせていただいてはいるんですけれどね、ですが公私混合はしないようにしていますのでね。シュインさんはそういった方はいらっしゃらないんですね?」

とやや挙動不審になりながら早口で返した。

「ものすごく公私混合していませんか」と返しながらも、先程までの静寂が破られた事にシュインは内心安堵していた。

「特にこれといって付き合っている方はいないんですが、中央で会った女性に気になる方はいます」

「ああ、研究報告でそういえば何度か前任の方にはお会いしていましたね。開発局の方ですか?」

「いえ、その………お恥ずかしながらホテルの階段で躓いて転落して、入院した時にその、診察で会った女医の方が…その、何度か話している時にこう、綺麗な方で…多分北系の悪魔の方でしょうか」

そこまで聞いてリニーウナは少し考えこむようにしてから、作業の手を止めて杖を振った。

「この人ですかね?」

「ああ、そうです…?!お知り合いでしたか」

「なんというか、趣味が少し変わってると言われませんかね?シュインさんは」

「失礼な」

くすくすと笑いながら一言謝るとリニーウナはそのまま杖を置いて作業に戻った。

「中央支部は交通手段が富んでいますし、連携を取って時間や会議の調整を行ったり、他の部署と連絡を取り次いだりといった仕事がどうしても増えるので、魔法使い達は割と顔見知りの方が多いんですよ。流石に医療機関に行った回数は片手で数えられる程度ですけどね。あ、右の方の書類取っていただけますかね?

……どうも。それで…ああ、そう。25区の研究所はどういった感じなんですか?」

「此処は外部との連絡は杖と魔法陣で粗方済ませてますからね。研究所内の方々も俺は多分全員話した事があるし、みんなで飲みに行った事もありますよ。アットホーム、っていうか」

軽い雑談を交えながら作業を進めている内に時計の針は周り、調整が終わった頃にはちょうど昼休みの時間だった。


杖を何度か振りルーと連絡を取り合っていたリニーウナは振り返ると嬉しさに顔を綻ばせながら席に座り直した。

「戻ってくるそうなのでこのままここで待ちますね。…何か?」

シュインは調整の終わった調査機の蓋の部分を指で掴んだりなぞったりしながら眉間に皺を寄せている。

26区の調査機は映像と音声記録を保存し持ち帰る事が可能な自立式の移動魔法具だ。一本脚の黒いガス灯のようなデザインをしており、周囲を照らす橙の照明の土台部分下に記録の保存された水晶花が内臓されている。

これを親機に接続して情報の精査を行った後に蓋を開けて取り出し、改めて記録を確認するのがシュインの午後の予定である。

「蓋の部分に何か埃のようなものが詰まっていて開けられないんです。26区には何か細かい砂のような物が舞っているんだと思う」

「無理に開けたら壊れてしまうかもしれません。しばらくしたらルーが帰ってきますから、彼を頼りましょう」

シュインは調査機を戻すと「探査局の?」と返しながら窓の外の人影を見下ろした。

「機器の操縦に関しては確かに彼の方が詳しいでしょうが、詳しい内部構造に関してはそれこそ貴女や俺の方が詳しいのでは」

「それはその通りですが…」

リニーウナは自身の杖を抱え直しながらほんの少し自慢げに鼻を鳴らした。

「ルーはね、私達よりとっても器用なんです」


◆4◆


黒く細い触手が研究所の中心でうねりながら調査機を掴み、蓋のあたりをなぞっている。

触手の根元の方、つまりは触手の生える土台があるべき所にはルーが立っていた。

「ほう」

そう空いた指で顎をさすりながら呟くと、暫く蠢かせていた触手を背中や首の後ろのエラのような隙間に収納して2人の方へと振り返り目を細めた。

「粗方隙間に詰まった物は掻き出した。残りも触手で溶かしたから開けられんという事はもう無かろうよ」

それを聞いたシュインが機器を確認すると確かに蓋部分のエラーは無くなっていた。

「ありがとうございます。これで中の記録が確認できる」

素直に頭を下げるシュインに対しルーは暫く何か考えるような様子を見せた後に口の端を歪めて笑いながら「構わんよ」と返した。

「だがそうさな、中の記録とやらに何が残っているか気になる。お前の前任の死因が残っているかもしれんぞ。………確か製作チームだったな。同行するが、いいな?」

「…それは、その、構いませんが」

シュインが少し困ったようにリニーウナを見やるが、リニーウナは眉尻を下げて微笑むだけだった。正直、中身の記録に興味があるのはルー1人ではなく彼女も同じだった。

「ごめんなさい、シュイン。探査局の職員が好奇心旺盛なのは彼に始まった話じゃないの」


食事に向かおうとする2人をシュインは少し躊躇った様子で見送った。

「あなた達は、その、催促だけして中央に戻っても良かった筈だ。決して迷惑だったとかそうゆう話ではなく……こんなに俺を手伝う必要は無い。仕事がまだ残っているでしょう」

それを聞いた2人は、少し顔を見合わせると足を止めてシュインを見た。

「これも仕事だからなァ。まあお前に恩を売って困る事もあるまいよ」

「親がいない時の心細さは少しだけわかりますから。私も両親を亡くしているの」

リニーウナは部屋から出ていく前に扉から上半身だけを覗かせて一言残すと、そのままルーを追うように駆け足で去っていった。

「もし良かったら、お父様がどんな人だったのか聞かせてくださいね。私もルーも、働く場所は違ってもあなた達と同じ魔法の徒。人々のために研究を続けてきた仲間に興味があるの」



食事の後、合流した3人は製作チームの方へと歩き出していた。

「自殺じゃないか、と噂がありました」

歩きながらそう切り出したのはシュインだった。

「仕事熱心だし、生真面目だったからそれで落ち込む事もあったのは確かです。それに毎日ラジオ体操とジョギングをする位元気だったから病気でも無い、と思う」

「ラジオ体操とジョギング」

口を丸く開けて唖然とした様子で言葉を繰り返すリニーウナを笑いながらもシュインは頷く。

「そう、ラジオ体操とジョギング。健康的な趣味だったのに全然体調を壊す人で…」

彼はそこまで言って、ため息を吐くと俯いて歩きながら研究所の廊下をじ、と見つめた。

「…正直な所、父の死の理由を知るのが怖い。もしも26区について、何か恐ろしい事実がわかって、それで絶望していたのだとしたら?そうでないとしても、所内の誰かが父を陥れようとしたなら、多分次は俺だ」

「………眠れなくなっていたのと、中央への連絡が遅れていたのはそれが理由だったんですね。」

「息子として大切にされていたとは思う。努力を認めてもらっていたと思っています。………ただ、ここから真実にどれだけ近づいたとしても、知らない方が良かったと後悔する事になる気がして」


「前を向く事がまだできないんです。目の前に家族の死という現実が転がっていて、俺は、………混乱していて、恐ろしくて、ただ。…時間が、ほしくて」

シュインはそう言いながら廊下側面に据えられた張りガラスを掌で撫でた。遥か遠方の亀裂の合間に覗く26区の瞳は数時間に一度の緩慢な瞬きの後もただ、変わらずこちらの方をじっと見つめるのみだった。



製作チームが調査機を親機である固定魔法杖に接続し、情報の精査を行う様子をルーは研究室の壁に背を預けながら眺めていた。

「安全性チェック。毒性は極微弱、人体に害のない範囲です」

「細菌、ウイルス消毒良し。記録映像エラー無し。水晶花を取り出し再生に移ります」

「26区内に生息する哺乳類、鳥類、竜類、妖精類を確認。生物の生息可能な環境です、探査局の箒乗りに探査認可。中央に連絡をお願いします」

…ふと、研究室の床に落ちてきた紙に気づくと身を屈めもせずに触手で拾い上げてそれをしげしげと眺める。

紙は一見白紙のように見えたが、これが調査機の蓋を開いた時に中から滑り落ちてきた事を見逃さなかったルーはそのまま無言で紙をポケットへと押しやり、研究室を後にするとシュインの元へと向かった。


「懐かしいな」

紙を手に取ってシュインはまず最初にそう言った。折り目のついた白の羊皮紙を指でなぞりながらそっと開くと、そのまま紙の中心に杖を翳しながら小さな氷の印を加えた。

「父と子供の頃遊びに使った暗号だ。こうして魔力を通すと文字が浮かび上がるように仕掛けがされていて、俺でも簡単に作れたからこれで宝探しを作ったりした───」

そこまで言ってからシュインは言葉を紡ぐのをはたと止め、目を見開いて固まった。

リニーウナとルーも同じように紙を覗き込んで見たが、書かれた文の意図が読めず片方は困惑し、もう片方は興味ありげに前のめりになって霜によって浮かび上がった文字に触れた。


羊皮紙には

──プロジェクトを降りろ 蓋を開くな


と、ただそれだけが書かれていた。


「製作チームは無事でしたか」

暫く間をおいてからシュインがそう言葉を発した。リニーウナは暫く呆気に取られていたが、ルーが頷いて肯定する様子を見てようやく我に帰りシュインを気遣おうとした。

だが、それよりはやくシュインが続けざまに口を開いた。

「"何もなかった"んですね?」

顔を上げたシュインの目は2人のどちらも見てはいなかった。

「父の死にはなんの意味も無かった。あの言葉も、懸念も、散々思い悩んでいた事も、何もわかってない。結局それで………それで、何かありましたか?ただ1人死者が出ただけ…」

そこまで言ってからシュインは研究室の机に自分の拳を激情のままに叩きつけた。

「何も起こらなかったじゃないか。何も無いんだ。」

そう笑うとまた握り拳を打ちつけた。鈍い嫌な音が研究室に響く。

「父の不吉な考えはただの空想だ、無駄だったんだ!」

そう言ってそのままシュインはずるずると机にもたれかかるように床にしゃがみこんだ。目は殆ど閉じられており、研究室の中は薄暗く3人の影もくらやみに殆ど解けていた。

「…あんな紙捨てていれば良かった」

震え声でそう絞り出すと、苦しげに顔を歪めて項垂れるのが辛うじてリニーウナには見えた。

「思い出のままなら綺麗に終われた筈だったんだ。父の事を知ろうとこれに近づいた事自体が間違いだった」

「シュイン…………!」

シュインの様子は目に見えてわかる程に限界だった。毎日が死の冷たさに覆われ、それでも必死で保ってきた何かが些細なきっかけで崩れてばらばらに砕け散ったような、そんな顔をしていた。

リニーウナはその悲痛な顔を見て雷に打たれたように固まり、次に言おうとしていた言葉を見失ってしまった。暫くの静寂の後にシュインは絞り出すように俯いたまま2人に懇願した。

「しばらく……しばらく、一人にしてください。向き合おうと努力してるんだ。父を………、父の事を大切に思ってた。それは間違いないから…」


それから三日程が経って、2人は中央へと戻る事になった。結局シュインとはそれ以上父の事について話す機会は無かったが、リニーウナは25区の書類の整理や実験の手伝いを変わらず行っていた。

最後の別れ際、シュインは2人に暫く見せていなかった笑顔をぎこちなく見せて何個かの包みを持たせてくれた。

「俺は………、それでも、26区を諦めないでいようと思う。2人には迷惑をかけました。悪かった。心ばかりの詫びの品ですから受け取って」

包みの中は銀装飾で造られたネクタイピンと髪留めが入っていた。

「父を尊敬しています。彼の目指した所に俺も立ちたい。

…いつか26区のあの目を持った生き物がなんなのか見に行こうと話した事があるんです。もしもこの先同じ恐怖に怯えたとしても、父のような死は選ばない」

「謝らないでくださいね、シュイン。せめて貴方達が無事で良かった」

リニーウナがそう首を振り、それからそっと髪留めを懐にしまった。船に乗り込みルーの膝の上に座ると、麓へ降りる長い川辺を進み始めた船にシュインが小さく手を振った。

「ありがとう。貴方達が中央に帰る頃には、父が26区に送った他の調査機の記録も送れていると思う。楽しみにしていて」


◆5◆


26区の瞳に最も近かった上流から麓へと下った2人が最初に会話をしたのは、丁度北ガパレ25区研究所と連絡を取っていた開発局の魔法使い達と、所内のプロジェクトに参加していたシュイン以外の魔法使い達だった。

真剣な顔つきをした開発局の青年が杖によって浮かび上がる映像の中で「主任」とリニーウナを呼んだ。

「遺体を鑑識に回した結果ですが、未知の毒性の痕跡が検出されました。ただ、残っているものは微弱で一体何の毒なのかがわからない。

そこでこの毒のサンプルを開発局の感染部門に見ていただいたのですが…」

そこまで青年が説明をした所で横からふいに軟体生物の触手がずるりと現れ、次いで青碧のベルベットのローブと顔を覆うヘルメットが映像の真ん中に陣取った。

「ここからは私が変わろう。ずっと話していては疲れるだろうから、飴でも舐めて少し休んでおいで」

そう言った魔法使いはそのまま緩慢な仕草で椅子に脚を組んで座すと、映像の向い側にいるリニーウナとルーを見やった。

「久しいねリニーウナ。東の提灯祭のパンデミック以来かな?彼はお友達かな」

「感染部門の方だとお聞きした時は誰かと思いました。…主任、お久しぶりですね」

ルーは感染部門の主任を頭から足先まで値踏みするように眺めた後に自身の所属と名前を名乗り、リニーウナを触手で抱えて会話に加わった。

「会えて嬉しいよ。だが今回の要件は急を要するから本題に入らせてもらおう。構わないかな?」

「死因について何かわかりましたかね」

リニーウナの問いに感染部門主任は助手に資料を確認させつつ頷いた。

「送られたサンプルを見たよ。開発局に保管されたデータを参照して類似の毒性が無いか調査したが、同じ物は無い。これは今迄発見されたことの無かった新しい有害藻類だ。可能性があるとすれば……ううん、推測の域を超えないが、26区から戻ってきた調査機に付着していた、とか」

「25区のプロジェクトリーダーの死因はそれですか?」

「他に外傷や致死性のある細菌、毒素の形跡は見られないね。」

そこまで2人が話した所で他の声が上から割り入ってきた。

「一つ質問があるが構わないな?」

軽く前置きを挟みつつ、他の面々の反応を丸っ切り無視してルーはそのまま映像に顔を寄せながら言葉を続けた。

「製作チームは恐らくその藻類を付着させた調査機を安全性チェックにかけていた。毒性は極微弱、人体に害のない範囲だと言っていたのを聞いたぞ」

その言葉に映像の向い側にいる軟体生物は少し考えこむようにしていたが、ほんの少しの間を置くと顔を上げた。

「その場にいたわけではないしデータもないから詳しい事は言えない。だが環境の変化で一時的に細菌や有毒物質の毒性が大きく増し、今迄安全だった筈の物が突如として致死性を帯びるといったケースは他にも何件か事例が確認されているよ。」


ルーと開発局の軟体生物との会話をぼんやりと聞いていたリニーウナが、ふと顔を上げた。

「…………偏性嫌気性菌?」

その言葉を聞いて感染部門主任は触手でヘルメットの下部分をずるりと撫でながら「成る程」と呟いた。続けてルーも一瞬目蓋を閉じて記憶を探るように押し黙ったが、2人の言葉に続けて納得がいったという顔をして目を開けた。

「…有毒藻類から発生した菌が芽胞の中で寒さを凌ぎ、蓋の内部の低酸素状態で増殖したか。」

リニーウナが頷く。

「蓋を開けた瞬間に内部で増えた毒素がバラ撒かれて、それから解放された事で酸素のある環境に長時間晒される。結果菌が失活したとしたら殆ど毒性は残らない」

「製作チームは確かに毒性無しとは言っていなかったな。微弱な反応は確認されていたし、体内に痕跡も残っている」

「鑑識班くん、毒素の痕跡が発見されたのは?」

感染部門の主任が後ろの方に振り返って問いかけると、研究室にいるであろう他の魔法使いの声が此方にも届いてきた。

「壊死した肺胞内部です」


気になっていた違和の原因が漸くわかった事でルーは機嫌良く笑っていた。

「蓋を開くな、の理由がこれか。」

そう言うと口の端を歪め、目の真下にある元いた裂け目のそばを眺めて席をおもむろに立ち上がった。

「まるでパンドラだな」


ルーの視線の先をつられて見たリニーウナは途端に顔色をいっそう青くして呟いた。

「シュインが二号調査機を回収すると言っていましたね」

「…調査機が戻ってくるのは今から2時間後です。あそこは杖では連絡が取れない、どう考えても今から戻るんじゃ間に合わない!」

研究員の言葉を無視してリニーウナは外へと飛び出した。

「私、行かなくちゃ。ルー!」

吹雪が酷くなり視界が白く染まりつつある中、外から聞こえる自身を呼ぶ声にルーもわざとらしいため息をつきながら立ち上がった。

「仕方のない我が儘姫だ」


船に転がり込むようにして乗ったリニーウナに続いて同じように船に乗り込むと、ルーは背中から黒の触手を何本か外へ広げるとそのまま数メートル先にある氷河を掴んで無理矢理上流の方へと船を引くように移動を始めた。

「いや何、元から気になってはいたんだ。蓋に詰まっていた物は明らかに研究所内で見つかった粉薬でなァ、詰まり方もとてもじゃないが自然に入り込んだようには見えなかった」

リニーウナはそれを聞くとオールを動かす手を一瞬止めたが、すぐにオールを持ち直して舵取りを再開しながらルーの方を見やった。

「人為的に蓋に封をしようとしていたって事ですかね」

「そうとしか考えられん」

ルーは頷きながら言葉を続ける。

「前任の男がパンドラの仕組みに気付いていたかはともかく、どうにかして息子を守ろうとしたんだろうよ。自身が死ぬことで中央から誰かが来るとわかっていたんだろう」

そこまで言ってからルーは手元の金の懐中時計を開いた。

「彼奴等の言う通りだ。触手で多少加速はついたろうが、このままでは間に合わんなァ。戻るか?」

「シュインのお父様の死を無駄にしたくないの。あの人は少しも研究を諦めてなんかいなかったって伝えなきゃいけない。」

リニーウナは進行方向へと向き直るとオールを片手で抑え、杖を頭上に掲げた。イェレル鉄道の運行の際に運転手が行っていた視界照射魔法を見様見真似で船に取り付けると、劣化コピーではあったもののほんの僅かに前方の吹雪が散り、光の照らす先に26区の瞳が悠然と浮かんで2人を見下ろしているのが見えた。

「目の下まで急ぎましょう。お願い、もう少しだけ付き合って。」

そう震える唇で告げてまたオールを動かしたその時、波間が青い光で照らされ、大きく流れが動いた。川の流れが止まり、26区の方へと船を引き寄せるように上流に向けて流れだすのがリニーウナにはわかった。

焦ってオールを強く握り持ち替えながら顔をもたげると、裂け目から覗く瞳が瞬いているのがわかった。

「なに、が」

そう驚いて僅かに後ずさるリニーウナの後ろからルーが顔を出すと、心底興味深げに26区を………正しくは、瞳孔から青白い光を放ちながら此方に焦点を合わせる26区の眼を見やった。

「…ああ、これに近い言葉を俺は覚えているぞ。深淵を覗く時、我々も深淵に覗かれている」

そう呟くとリニーウナを見下ろしてにたと笑った。

「どうも彼奴はお前のやりたいことに"付き合う"つもりがあるらしいぞ?リニーウナよ」

ルーはそう言うと心底楽しそうに声をあげてはしゃぎ、懐中時計を懐にしまって触手で船を引くのを再開した。

「あれも生き物だというのをすっかり忘れていたな。まさか動くとは思わなんだ、これは楽で良い!」

逆転した凄まじい勢いの川の流れに振り落とされないよう、船のへりにしがみつきながらリニーウナは26区を見た。目は光っている事以外は普段と変わらぬ様子で此方を見つめている。ルーが大きく片手をあげて振ってみせたが、何か返事があるわけでもなく、強いて言えば青白い光がよりいっそう強く瞬くだけだった。

「25区はとても良い所ですね。」

それでもリニーウナはその目に希望を見出した。シュインのいる研究室は目前に迫っており、時計の針はついさっき2時間経ったのを示していた。今頃調査機の回収を終えたシュインは、2人で修理をしたあの場所に2号機を運び終えた頃だろうか。

触手を閉まって船を桟橋に停める様子を振り返りながら、リニーウナは打ち出されたように船を飛び降りると小さな白い手でルーの服を掴んで引っ張った。

「ルー。最後まで良い旅にしましょう、後悔の無いように!」


…シュインが二号調査機の蓋に手をかけるのと、リニーウナがただ必死に足をもつれさせながら目の前の扉に手をかけたのはほぼ同時だった。



◆6◆


……鈍色の宝石が埋め込まれた革手袋が棚の中にある黒い装丁の背表紙を鷲掴んでは引き抜き、腕に積まれた資料の塔を更に高く積み上げていく。

頭の上より高くまで積み上げた本を抱えて、男はばたばたと走り回っていた。

赤と紫のビロードのローブが足で木の床を蹴るたびに翻り、そうして山程の研究データを抱えて彼は研究室へと滑り込んだ。

「遅れてすみません、どうしても基礎資料が見つからなくて。探していたら別部署の棚に間違えてしまわれていたみたいで」

懐中時計を手に持ち、時計の針と羊皮紙の文字を交互に眺めていたリニーウナの顔が上げられる。ルーも横に立ち、26区の深部で発見された大陸寄生種との対話記録を報告していた所だった。現在探査局の箒乗りが探索した北地域は26区から更に北に伸びて、現在は中ガパレが命名権を持ち新たな土地の名前を魔法省に提出しているとの事らしい。

「なんだ、寝坊でもしたかと思ったぞ。なぁ?」

そう言いながらリニーウナの懐中時計を後ろから覗き込むと、リニはルーに見せやすいように銀の時計をそっと机の上に置いた。


魔省の研究所は職員の入れ替わりこそあれど、今日もやる事は変わらない。実験、調査、資料作成、会議。

その職務は多岐に渡り、中央に近づけは近づく程専門性とスケジュール管理能力が必要とされる。

「3分の遅刻ですよ、シュイン魔法使い。」


中央南区魔法開発局第三支部、対策魔法部門は正規の魔法使い達、派遣魔法師に関わらず多くの生物で溢れかえっていた。

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