五昼夜

 夢を見た。


 彼女がいない。そのこと自体はまたかと思っても不安はおさまることを知らない。例のごとく家中を探し、覗き穴から何も見えないことを確認してから家を飛び出した。


 そうして街中を駆け回り、やっぱり見つからないままいたずらに時だけを費やしたあと、ふと目の端に城じみた建物が映った。どういう意図で建てられているのかも知っていたし、実際に同じ目的で造られた建築物を使ったこともある。兎にも角にも誘われるようにして中に入った。


 延々と続く廊下の突き当り。ここだと思い扉を開ける。


 大きなベッドの上、摩耶が喜悦の表情を浮かべて男と抱き合っていた。もっともっととねだるよう、自ら体を押しつけている。


 楽しんでいる。そのことにかつてない絶望感をおぼえ、膝を落とし……


 /


 夢を見た日の夜。どことなく、落ち着かなくて、摩耶を求めようとするが、

「ごめんね。今日は疲れてるの」

 口調こそ丁寧ではあるものの、はっきりと拒まれる。

 疲れてるのにごめん、と謝りながら、夢の中で味わった絶望が現実にまで押し寄せてくる気がして、たまらなく不安だった。

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