結局、海に戻る
京極道真
第1話 リセット完了
「あの夢を見たのは、これで9回目だった。」
波に揺られてる。今回はプカプカ浮いてる。
サメに追われない。大波も来ない。
ただ穏やかに波に浮いてる。
「おっと。」足が砂に着きそうだ。
今回は砂浜に近いにところに落ちた。
「良かった。」
それになんだ今回は大きな浮き輪まで。
前回の海の夢はひどかった。
沖に落ちたせいか、砂浜の陸を目指すのが大変だったよな。
浮き輪もないし、必死でクロールで陸を目指した。
途中、何回も大波かぶってゲポ、ゲポ状態だった。
夢だと分かっていてもマジこのまま海に沈むのかと、必死で泳いだ。
やっとの思いで砂浜までたどり着いたところで目が覚めた。
まあー、いつものことだが。
そして大きな転機が。大学4年。就活惨敗だったが、急きょアメリカ企業から声がかかる。
そして今、僕はなぜか、日本にいる。
なぜだー。夢の中の波に揺られて僕は頭上を見上げた。
夢とわかっているけど、なぜかこのリアル感。
僕は小さい時から人生の転機には必ず海の夢を見る。
はじめの2,3回は気にしてなかったが、
さすがに高校まで来ると、7回目だ。
悪知恵が働く。
つきあってた彼女とぎくしゃくしだし、状況を打開したくて、寝る前に海の夢が見れますようにと、逆に夢の指定をしてみる。
もちろん海の夢は見れない。
あげくの果てに別に好きな人ができたと、
あっさりフラれる。
まあ、世の中そんな、モノだよな。
今回は穏やか過ぎる。海に落ちてるのに
こんなに、穏やかな気持ちは久しぶりだ。
太陽の光も暖かい。海水も冷たくな。ぬるい。気持ちいい。
夏か?
「カーカー。」
「おい。おい。」
僕は頭上のカモメに「カーカー鳴くな。お前はカモメだろう。鳴き方を間違えたか?」
「俺様の勝手だろう。泣き方は自由だ。」
「そうだな。カモメがカラスの鳴き方しても
おかしくないか。おまえの勝手だ。自由だ。」
カモメは僕の頭上を大きく旋回しながら
「そこの人間。お前こそ、何やってるんだ。
ここは人間の3次元とは違うぞ。
ここは0次元だ。人間もAIも干渉できない。
0次元。」
「0次元か。なんか響きがいいな。」
カモメが急降下してくる。僕の浮き輪に止まる。
「あっ、お前、トキオだろう。」
「なんで僕の名前を知ってるんだ。」
「トキオ、お前は小さい時から、
ここ0次元に時々来てるだろう。」
「そうだ。海の夢を見てる。
無意識のうちに自分の転機には。
ここに来てるが、それがどうした。」
「この0次元は、はじまりと終わりの世界だ。
お前は無意識のうちにここにきてリセットしている。お前は人間だが人間じゃないぞ。」
「じゃあ、僕はなんなんだ。」
「お前は海だ。だが、お前はお前だ。
トキオ。また来いよ。じゃあな。」
カモメは飛び去り。
「なんだよカモメ。0次元?」
僕は目を覚ます。リセット完了。
僕の日常が、またはじまる。
結局、海に戻る 京極道真 @mmmmm11111
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