第3話

 この笑顔だけは、ぜったいに忘れちゃいけない気がする。絶対に、そう、絶対に。




 そう思った途端、今までつかめなかったが、そっと手のひらに降りてくるのを感じる。


 ――『由芽ちゃん、一緒に行こー』

 ――『これホント好きだよね、由芽ちゃん』


 いつもとなりにいたのは誰……?


 ――『かっこよくて、いつでも優しいところ、』


 あぁ、そういうことか。やっと思い出したよ。


 ――『ホント、』


 ごめんね、忘れちゃって。

 ごめんね、ごめんね、忘れちゃって、ごめんね。


 ――『好き』


 温かい視線が向いているのは、いつもいつも私の方だったのだ。


 かちゃん、と心の中で記憶の扉が開くのがわかった。


「待って、櫂くん」


私の好きな人。

今まで隣にいたはずなのに、忘れてごめんね。


今まさに出ようとしていた彼――櫂くんは、そっと振り向いて……泣きそうな顔で「思い出した?」と笑ったのだった。


~終~

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【KAC20254】9回目の夢の終わりと、彼の笑顔と ほしレモン@カクヨム低浮上 @hoshi_lemon

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