【KAC20254】9回目の夢の終わりと、彼の笑顔と
ほしレモン@カクヨム低浮上
第1話
あの夢を見たのは、これで9回目だった。
どこか、暗い道を歩いていて周りの音もない、静かなところをただ歩いている夢。
しばらく歩いていくと、先の方が光ってくるのだ。
そこに行こうと走るけど、全くそこには行けなくて。
いつの間にか隣に私と同じくらいの男の子が立っている。顔は見えないけど、黒い髪
で目元を覆い、無造作にはねた髪型の彼。
そしていつも、何かを思い出しそうなところで、はっと目を覚ますのだった――。
―――
ピッ、ピッ、ピッ、と規則的になる電子音が聞こえた。
目を開けると、そこは白い世界だった。白い壁、天井、そして私と他の人を区切る白いカーテンの境界線。
すると、私が起きたことを見ていたかのようなタイミングで、ガララ、とドアが開いた。
「ごめん、来ちゃった」
「あ、ありがとうございます」
黒いパーカーから顔を出し、いたずらっ子のように笑う彼。
この子は、9日前、私がここに来た時から毎日来てくれている子。
そして――最近毎日欠かさず見る、あの夢に出てくる男の子。
私の方に近づいてくると、持っていた紙袋を掲げて、「由芽ちゃんの好きなやつ買ってきたよ」と言った。
「私の、好きなもの……」
「うん、イチゴ大福。――好きだったでしょ?」
すぐにうなずけなかった。代わりに、小さく「ごめんなさい」と声が漏れた。
そうすると彼は明るく「無理しないでいいよ」と笑ってくれた。
でもその目はどこか、寂しげに揺れていた……。
※続く
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