色とりどり

くにすらのに

色とりどり

あの夢を見たのは、これで9回目だった。


 同じ夢だけど最初だけちょっと違う。初めてこの夢を見た時は赤いトリの降臨から始まった。なぜかモノクロだった世界を赤いトリが真っ赤に染め上げて、トリはすごく満足そうな笑みを浮かべる。


どうして世界がモノクロになっているのか、そしてなぜトリは真っ赤に染めたのかわからない。とにかく真っ赤だった。どこを見ても赤、赤、赤!


 濃淡はあるけど本当に赤だらけ。肌は赤いしケガをして出てくる血も当然のように赤。目がチカチカして仕方がない。とにかくこの赤い世界で私以外の人達はそれが当たり前のように生活しているのが余計に辛かった。


 私の目だけがおかしいのかと思って「全部赤いよ!」ってお母さんに訴えも「それがどうしたの?」という返事だけ。赤以外の色がこの世から消えてしまったのかと思ったけどそうじゃないみたいで、青や黄色、エメラルドグリーンやパッションピンクの存在も知っていた。


 知っているうえで、この赤だらけの世界に順応していた。


 いつもはベッドから出るのが嫌だけど、この日ばかりは飛び起きていつもの世界が広がっていた時は夢だとわかって安心したね。


 こんな夢が何回も続いた。2回目は青、3回目は黄色。トリが世界を塗り替える色が変わる以外は同じ展開。私だけが一色の世界に違和感を持っていて、目覚めるために安堵する。


 5回目ともなるとさすがに慣れるだろうと思ったらさすがに金色の世界は目に堪えた。アクセントとしての金色は良いけど全部キラキラのゴールドはさすがにキツい。もしすごい大金持ちになっても全身金色コーデだけは絶対にしないと心に誓う日になった。


 そして今日、昨日になるのかな? は黒一色の世界になってしまった。白が200色あるように他の色も正確には赤以外の名前があって、だけどざっくりと赤と答えればみんなが納得する。スタートがモノクロだから白と黒は例外なのかなって思っていたらついに真っ黒になってしまった。


 前後左右上下がみんな黒。私以外は普通に生活しているみたいだったけど、さすがに黒すぎてただ大人しく時間が過ぎ去るのも待つことしかできなかった。


 この夢を何度も見る私の心理状態ってなに? トリの目的もわからない。あのトリが何羽かまとめて来れば一色に染まらないで済みそうなのに、どういう世界観なんだろ。


 そして気付いてしまった。あのトリ達を捕まえて色とりどりにしちゃえばいいんだ。次は記念すべき10回目だ。黒が来たから次は白の可能性が高い。


 まず白をベースに、いろんな色を足していけばきっと夢の世界がカラフルになる!


 赤とか青とかすでに9羽取り逃がしてるけど、同じトリが二度と来ないと決まったわけじゃない。そろそろカラーバリエーションが尽きて二度目の降臨もあると思うんだよね。


 一色に染まる世界は悪夢みたいって思ったてたけどなんだか楽しくなってきた。


 将来は色に関わる仕事を目指すのもいいかも。真っ白だった進路調査票に少しだけ希望の色が見えた気がした。

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