第3話 一時間目の授業で

さて移動教室後の授業は初手から【対バイアスデル授業】だった。

席はどうやら今回は名簿番号順らしく、史深とはだいぶ離れてしまった。

灯刃学園はこの授業の為に仮想空間で戦闘が出来る【戦闘教室】がある珍しい学園だ。

そもそもこの灯刃学園以外にも【対バイアスデル授業】がある学校は幾つかあるが、こうして戦闘訓練を組み込んでいるのは灯刃学園ここくらいである。

そして、僕等の【対バイアスデル授業】の教科担任の先生はというと。

「初めましての顔が居るな!! そこの転入生…冬代か! 俺は佐野冬馬、この授業の教科担任だ!」

ヤバい、めっちゃ熱血系の先生だ。苦手なタイプだ!

「冬代氷葵です、どうぞよろしくお願いします」

ペコリと軽く一礼すると佐野先生はにっかりと笑みを浮かべ、そして授業が漸く始まった。

「今日は戦闘訓練2回目だ、冬代は封銃オルモスの使い方分かるか?」

「はい、問題ありません」

「そうか、それなら名簿番号順に戦闘訓練を行う! 訓練だからといって気を抜かないよう、スライムを確実にほふれ!」

その言葉を皮切りに、皆が一斉に封銃オルモスの準備を始める。

成程、こんな感じの授業なのかと周りを眺めていると後ろからクスクスという笑い声が聞こえた。

其方そちらをチラ見すると先程史深に軽蔑の色を向けていた少女を真ん中に三人ほどのグループが居た。視線の先は───史深?

史深は封銃オルモスの準備をゆっくりやっている、あの子は間違えないようにやっているんだとほっこりした所で僕は気付いた。

まさか、ゆっくりやっている事に笑ったのか?

僕は自分の席を立つと、史深の所へ移動した。

「史深さんや、どうよ?」

ちょっとおどけながら史深に話しかけると彼女はパッと顔を嬉しそうに綻ばせなから口を開いた。

「氷葵、もう準備終わるよ。氷葵は大丈夫?」

「僕はいつでも使える様にしてあるから大丈夫、史深の番が来るまで此処に居ていい?」

「勿論!」

嬉しそうに側で準備をしている史深を見てから、後ろをチラ見すると先程の少女達がヒソヒソ話をしながら舌打ちをしていた。

残念でしたね、君等が笑っていた人の側に人が来て。

「氷葵? なんかあった?」

「ううん、何でもない」



「それじゃあ冬代、お前が今日の最後だ」

名簿番号って言ったのに僕だけ最後に回されました、若干不服です。

「冬代の封鍵オルモスキーは……銀か。俺は冬代の戦闘技術も見たいからの少し強めの敵でも大丈夫か?」

「はい、問題ありませんよ」

僕がそう言うと少し離れた所に居た史深が表情を曇らせた。大丈夫の意味も込めて笑いかけると頷いてくれて。どうやら大丈夫そうだ。因みにあの少女達に何かされても大丈夫なように史深には軽くお守りの術を掛けといた。

仮想空間に入ると数メートル先にスライムが15体ほどおり、その真ん中には人型の化け物が設置されていた。

『冬代、ダメだと思ったら言ってくれ。そいつらを全員倒せば訓練は終了、封銃オルモスは勿論、何か使える術があれば使用可だ』

上のスピーカーから佐野先生の声が聞こえる。この待機状態も待機教室では見れるらしい。クラスメイトももしかしたら見てるかもしれないな。

「了解です」

封銃オルモス封鍵オルモスキーを差し込んで起動すると、そのタイミングで訓練が始まった。

ぐにゃりぐにゃりとスライム達が此方を排除せんと迫り来るし、人形の化け物は体液をポタポタと垂らしながら此方に走り寄って来ている。

なので僕はすぐ終わらせる事にしようと思い封銃を敵に向けて魔力を込め、言った。

「ばん」

刹那、封銃オルモスから閃光が放たれ、直線上の敵…つまり襲って来ていた敵を蒸発させた。直線上から少し離れていたスライムも余波で瞬時に蒸発する。

《time:0:10》

おっと、ちょっとやり過ぎたらしい。10秒だなんて力加減をミスったぞ。

『冬代……お前、何者なんだ?』

佐野先生の呆然とした呟きが、耳に残って一時間目の僕にとっては初回の【対バイアスデル授業】が終了した。





  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

高校生、世界守ります。 @rina0320

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ