9回目の遭遇

金澤流都

幻想少女との邂逅

 あの夢を見たのは、これで9回目だった。

 夢の中で遭遇するのは、いつも決まって、素晴らしく美しい、瞳も髪も純白の少女で、その少女はその容姿に似合わない悍ましい声で言うのだ。


「助けが欲しいか」


 と。


 決まっていつもその言葉を聞いたときに目が覚める。そしてこれで何回目か、今朝であれば9回目であることをハッキリ覚えている。

 何度か友達に話したこともある。そういいものではないのだが。


 彼女は何者なのか。真っ白い少女はいつもにこにこと微笑んであの悍ましい声を放つ。

 布団から起き上がって充電の済んだスマホを見ると、怪異と地球連邦軍の戦争はジリ貧なのではないか、人類は怪異に滅ぼされるのではないか、そういう絶望的なニュースで満ちていた。


 その日、僕がいつも通り高校に行くと、先生に声をかけられて進路相談室に連れて行かれた。心当たりが全くないので何事かと思ったら、地球連邦軍の制服を来た白人男性がどっしりと座っていた。


「君は夢のなかで『幻想少女』と出会うのだそうだね」


 そう言われて、あの真っ白な少女を思い出す。


「真っ白い女の子のことですか?」


 そうか、と軍人は考える。


「夢に現れる『幻想少女』はさまざまな姿をしている。君の場合真っ白いんだね。何回出会った?」


「9回です」


「ハッキリ覚えているのも特徴に合致する。来たまえ」


 軍人に言われるままついていくと、外にはヘリコプターが止まっていた。どこに行くのか知らないままヘリに乗せられ、海上の基地で降ろされた。


 たどり着いたのは、僕と同じくらいの歳の、世界中から集めたと思しき少年ばかりいる部屋だ。


「ここで『幻想少女』を召喚し、怪異にぶつけるんだ」


 そう言われてゾクリとした。僕の夢に出てくるあの子は、どちらかと言うと怪異ではないのか。

 カプセルに入って目を閉じるよう言われる。

 なにやら慌ただしく大人たちが動き始めた。緊急事態が発生したらしい。


「怪異が怪異を喰っています!」


「真っ白い髪の少女の怪異です!」


「怪異、消滅しました!」


 そのとき、悍ましい声がとどろいた。


「また会うからな」


「白い怪異、消滅しました!」


 そうか、やはり君は怪異だったのか。

 その後も彼女は天使として、夢に出てくるのだった。

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9回目の遭遇 金澤流都 @kanezya

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