第31話 誰?

階下に降りると、ショータがリビングのソファに座って、ぼんやりしていた。


「ショータ」


声をかけるとこっちを向いたけど、いつになく真面目な顔をしている。


「話せる?」

「ママとお義父さん、帰って来るって」


いきなりだったからなのか、ショータが驚いた声をあげた。


「えっ!」

「そんな驚かなくても」

「あ、うん、そう、だよ、な」

「メッセージ入ってたの気づかなかった……朝の3時に送信されてる。相変わらず朝晩の時間の概念がおかしいっていうか……『今から帰ります』って、この『今』っていつのことなんだろ」

「紗羅、話を聞いて」


いきなり持っていたスマホから着信音が流れたので、あわててスマホを床に落としてしまった。拾うと、画面にママの番号と名前が表示されていた。


「ママから」

「あのさ、紗羅」

「待って。先に電話出る」


電話のアイコンをタップすると同時に、ママの声が響いた。


「ねぇ、暗証番号変えた?」


そう言えば、初めてショータが家に来た日、番号を書いたメモを失くしたって言ったから変えたんだった。それを伝えるのをすっかり忘れていた。


「ごめん、番号は……」

「後でいい。取り合えず中から開けて。今、玄関の前にいる」

「わかった。じゃあ、電話は切るね」


電話を切ってからショータに教えた。


「ママとお義父さん、もう家の前にいるって」

「紗羅、話を聞いて欲しい」

「ちゃんと聞くから。ママとお義父さんをずっと玄関に立たせておくわけにいかないでしょ?」



ショータの話なんか聞きたくない。



ショータをリビングに残して、玄関に向かった。




玄関のドアを開けると、やや元気のないママと、にこにこしている義父が立っていた。


「お帰り。どうしたの急に帰って来るなんて? あと2週間は旅行するんじゃなかったの?」

「うん……ちょっとね……」


電話の時もそうだったけど、微妙にママのテンションが低い。

まさか、成田離婚じゃなくて、新婚旅行離婚の危機?


「ただいま、紗羅ちゃんにたくさんお土産買って帰ったよ!」


ママとは逆に、義父はやけに機嫌がいい。



2人が先にリビングに向かったので、後からついて行った。


最初にリビングと廊下を隔てているドアを開けた、義父が言った。



「君は誰?」

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