第20話 記憶

ショータは少しだけ早く帰って来るようになった。

そして、帰って来ると「気晴らし」と言って、外に連れ出してくれた。相変わらず後ろを気にしながら。



毎日ポストを見ているけれど、あの変な手紙は結局あれからきていない。

家の周りでパトカーをよく見かけるようになったせいか、自分の部屋からカーテンに隠れて外を何度も見ているけど、あの男もあれっきり姿を現していない。



そんな日が続いて、もう何も起こらないんじゃないかって、思うようになった。

ショータの腕の傷はとっくの昔に跡形もなく消えていたし、わたしもあんなに怖かった記憶がだんだんと薄らいでいった。

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