第8話 家

私に触っている手をぺちっと叩いてから、床に転がったままのアイスを拾って、コンビニの袋に戻した。


「ショータ、荷物は?」

「あー、宅急便?」

「まだ届いてないよ」

「明日には届くんじゃない? 今日は服着ないで過ごすのもアリだし」

「中高生対象の少女漫画に、会ってすぐのワンナイト展開はなし」

「ふうん」


不愉快そうな顔を浮かべるかと思ったら、ショータは楽しそうに笑った。


「一度溶けたアイスをもう一回凍らせても食べられるよな?」

「形は崩れちゃってるけどね」

「置いてったんだからもらってもバチ当たんないな」




家の中を一通り案内して、最後にショータの部屋に連れて行った。


「ここがショータの部屋。ドアには外からも鍵もかかるようになってるから」

「外から見た時この家もうちょっと大きく見えたんだけど?」

「よく気がついたね。この家、もう一個玄関があって、そっちはママの仕事場に通じるようになってる。二世帯住宅みたいな感じ?」

「へぇ。紗羅ん家金持ちなんだ」

「ママが頑張ったから」

「父親は?」

「わたしが小学生の頃、女作って出て行った。それからはママが中学も高校も大学も行かせてくれて、好きなことやらせてくれた。こんな大きな家にも住めて、感謝しかない」

「もしかしてそれもあってネタの提供?」

「まぁね」

「そっか。あのさ、実は……」

「お腹すいた?」

「え? あ、うん」

「ご飯作るよ」

「だったら、手伝う」


これは……


新しい展開だよね?

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