KAC20253

菊武

第1話 猫の妖精

 猫が好きだ。

 ある日気になる猫の後をついて歩いて行くと奇妙な路地へと入って行く。


 「へえ、こんな所に道があったんだ。」


 猫はどんどん奥へと進んで行く。


 あまりにも狭いので吹き返そうかとも考えたがどうせなら行ける所までいってみたい。


 それのな度々猫はこちらを振り返り僕が着いて来ているのを確かめている……ように感じる。


 これはちゃんと着いて来いって事だよな?


 気のせいかもしれないが、気になる猫にこうされては可能な限りは着いて行きたい。


 こうして猫に促されて路地をどんどん進んで行く。


 先に進んでいた猫が立ち止まりこちらを振り向くと


 「にゃー」


 と鳴いた。どうやらここが目的地みたいだ。

 そこはどこかの会社の荷物置き場なのだろう。乱雑に積まれた何に使うか分からない荷物や道具が散乱している。


 「勝手に入って良いのかな?」


 けれど猫がそこで待っている。

 ちょっと入るくらいなら構わないよな?

泥棒する訳でもないし。


 猫の傍まで行くと僕の足に身を擦り付けてからまた着いて来いとばかりに進み始めた。


 積まれた荷物の隙間。そこから


 「みーみー」


 と子猫の泣き声が聞こえる。

 親を探しているのかか細い鳴き声だ。


 中を覗き込むとそこにはまだ小さな子猫が3匹。それと親猫らしき姿。


 「なんだ親猫も居てるじゃないか。」


 いやちょっと待て。様子がおかしい。

これだけ人間が近づいても親猫は何の反応もしない。

 それに全然動かない。子猫達はその親猫らしき姿に寄り添い鳴き声をあげるばかりだ。


 「確認したいけどこれは狭すぎるし、中も詳しく見れないな。」


 荷物を退かせば何とかなるか?


 子猫の鳴き声に突き動かされ荷物を動かして中を確認してみる事にする。


 どうかここの人が来ませんように。


 こんの所を見つかれば不審者扱いは待った無しだ。


 「中々重いな。」


 力を込めて気合いを入れる


 「よっせ~い!」


 重い荷物をのけて何とか中を確認するとそこには


 「あれ?」


 そこに寝そべる親猫の姿。

 それはさっきここに案内してきた猫の姿にそっくりだ。


 「あれ?そう言えばあの根子は?」


 その親猫の姿とそっくりな子猫達。そして寝そべったまま身動き1つしない猫を見て。


 「そうか……心配だよな。子供を残したまま死んでしまったなら。」


 きっとあの猫は猫の妖精となって俺をここに案内したのだろう。


 だって目の前に羽を生やしたさっきの猫が空に旅立って行くのだから。

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