転生したら女神から訳ありチートアイテム授かったので軽く無双していきたいとおもu……ぴぎゃ!
インプゾンビ感染者
第1話
意識が覚醒した時には手には一本のバッドが握られていた。太陽の光に照らされてそれは銀色輝いている。
目に映る光景には人が営む街並みがあり、俺は丁度裏路地に差し掛かるところで俯いて座り込んでいた。
あぁ転生したんだなあと呟く。しかしその言葉をいくら口にしても実感はまだない。
というか一度死んだ身で次の生が授かるなんて、誰が簡単に飲み込める物だろうか。
「取り敢えず気持ち切り替えるか、ここに居ても事は進まないからな」
自分に言い聞かせて立ち上がる。その時に自身の固い鎧がガシャっと音を立てた。
今世での俺の名前はルーブック=ハンク。この街の警備員を安い給料で任され、そして転生させてくださった女神様から『レイショバッド』と言われる武器を授かった独特な経歴を持つ男である。
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「ハンク。見回りにしては遅いじゃないか。早く昼飯の時間にしよう」
「ごめん少し遅れたな。この地を知らない人に道案内を任されてしまっていたんだ」
幸運にも俺の鎧には警備員の証である勲章が、警備員待機室に同じのが貼られていて外周から戻ることが出来た。
逆にこれが無かったら自分には以前のハンクの思い出は無いため、ここに戻る事が不可能であった。危ないなぁ。
冷や汗タラタラで、同僚のミズという太った男の後を追った。
どうやら屋台で食べる予定らしい。この世界でもファストフードという概念があるらしくナンチャラドナルドとかのハンバーガー店が無いが、屋台がそれを担っている事が分かった。
女神様には、魔物がいる世界だ、魔法がある世界だ、前世みたいな生易しい世界じゃないから気を付けて生きてください。とか漠然とした事前情報を教えられていた。しかし、こう街並みを見る分には凄い平和に見える。
魔物が襲ってくるから高い壁とかでも用意しているのか?常に軍隊で目を光らせているのか?と色々予想していたが目立つような警備は施されていなかった。
「それでなあ、ウチは十キロ以上離れて自然の囲まれたところに実家があるんだけれどよ。食事を作る時に換気扇を開けっぱにして忘れていたんだ。そしたら運悪くスライムが侵入してよぉ。娘に火傷を負わせたんだ。本当に最悪だ」
「それは災難だったね。なに?腕とかに火傷したのか?」
「いや、顔だよ。腕だったらまだマシだったのにな」
「それは返す言葉が出ない」
同僚の話を聞くにこの世界は基本的は魔物は人里離れたところで暮らしているらしい。時に山を下りて人の集落に迷惑をかけることがあるらしいのだが。ちなみに迷惑っていうのは集落が崩壊するレベルのね。
「だったらこれを機に実家ごと、この街に引っ越せばいいのになぁ」
「ばかいえ。それが出来てたら苦労しねえよ。ここらはシュルナイツ帝国の有名な五大帝国道の一つ、セルス帝国道に位置している場所だ。地価が高すぎる。てかお前も定住せずに宿屋暮らしだろう?それぐらい理解して欲しい」
「お、おうそうだな!確かに俺も宿屋暮らしだ!」
いや、定住していないのかよ。初めて聞くこの地の常識に頭を悩ませた。
もちろん俺が求めているのは安定した生活水準だ。
細かく言えば食に困らず、魔物からも安全に暮らせる場所に家を持つこと。
前世では俺はホームレスだった。経緯はただ人生に何も打ち込む物が無くて転々としてたら必然的にそうなった。
何故か自分は人脈づくりには長けていたようでホームレスという立場で沢山の子供に慕われていたし、友達の社長さんからはたまに仕事を紹介してもらえた。
とはいえ、いずれ辞めるだろうとマイナスな考えで断っていたが。
話を戻そう。
俺は取り敢えず安定した住居を手に入れていないという事に不安を覚えていた。
もしこの警備員みたいな仕事が不安定で宿屋代が払えなくなった時が最悪だろう。
土地代とか全然この世界の基準を知らないけど購入済みの家があった方が退去を追われても粘れる気がする。
クズの思考だが最優先は命だ。
前の世界では優しい人はたくさんいたがこの世界はどうやら魔物に溢れているらしいじゃないか。
野外で寝てて急に魔物に食われたりでもしたら大変だ。
この国のシステムについてよく知っておかなくてはならない。
いや、まずその前に宿屋に帰ることが最優先か。全くマップが頭の中に入ってない。
「な、なぁ。その言い方で言うとミズも宿屋暮らしなのか?もしかして同じ宿だったりして?」
「当たり前だろう。
急に希望を見出した。
「さっきからハンク、お前様子おかしいぞ?賊に頭でも打たれたか?」
「いやあ、別にただ寝不足なだけで。あはは」
何とか誤魔化してその場をやり過ごす。
まあ流石に誤魔化しきれたとまでは思えない程にミズの剣幕が凄まじいが。
とりあえず俺にはコクホウシギョウっていう安定している位置についているらしくてまだ、住居については考えなくてもよさそうだ。
とりあえずお金の価値とか、他に覚えておくべきところがある。
そう意気揚々と銀貨三枚を屋台に払って午後の警備に取り掛かるのであった。
価値は知らない。注文したのは肉汁が滴る串焼きと、野菜がこれでもかと詰まったフワッとしたサンドイッチだった。
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空気がビビッと振動するほどの大きい衝撃音と共に土と埃が舞い上がる。
大型物流管理倉庫の廃墟の中央に大きなクレーターが発生した。
それと共に、のっそりと活動を始める謎の生命体。
小さいソレは近くにいる鼠や虫などを捕食して更に大きくなっていく。
「なんだ?!廃墟探索中に何が起こったっていうんだよ?」
「それ以上行ったら危険だって!引き返そうよ!」
ちょうどクレータを覗きに来た10歳ぐらいの少年二人。遊びにこの廃墟を訪れた一人は爆音に興味をそそられて逃げる選択肢をそっちのけで見に行ってしまった。
二人が目にしたのは、脳みそみたいな生物で顔も手足も存在し無い。ただ無数の触覚がタコみたいに地面にニョロニョロと伸ばしているだけで……。
「ま、魔物だぁ!!」
逃げ腰の男の子が正体に気付いて急いで声を上げる。それは親友にむけて「早く帰ろう」の合図だった。しかし、すぐに異変を感じ取る。
「なんで動かないの……え?」
既に彼の隣に居る威勢のいい男の子は頭からバックリと触覚に喰われていたのだった。脳みその様な魔物はまるで咀嚼するかのように波打った。絶望が漂うこの空間でただもう一人も立ち尽くすことしかできなかった。
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仕事がやっと終わった。
どうやらこの世界では朝の10時から仕事が始まり17時に終わるのが基本らしい。もちろん役職よって違うが平均がコレなのはホワイトだな。
仕事後の一杯を誘われたが、アレコレ理由を付けて断り、「お前のお気に入りのソフィア嬢もいるんだぞ」とか言われたが全くそそられなかった。今の俺からしたら誰だよソフィア嬢って感じ。
そんな二人で和気藹々と話しながら宿へ戻る途中。不意に警報が鳴り響いた。魔法で拡張された声には魔物が現れたことを知らされた。街に突如として緊張感が走る。
注意喚起されたのは1キロほど先にある今は使われたない倉庫の廃墟。広大な敷地と頑丈な作りによってまだ周囲の生活圏には被害が出てないようだが時間の問題のようだ。
とりあえず距離は離れているから状況が収まるまで待とうか。魔物がはびこる世界だ。どうせ騎士団みたいな治安維持する武力活動を率先して行う役職とかがあるんだろう。よかったぁ本当に帰りが17時でよかった。もし早くもその廃墟の場所通ってたら転生直後に魔物になぶり殺されるところだったよ。
「こりゃあ近寄れないな。ハンク。今日は別の場所で寝泊まりだ」
「え?もしかして廃墟とコクホウシギョウの宿屋って近い感じなのか?」
「……知ってると思うが、めっちゃ近い。徒歩三分圏内」
それを聞いて俺は考え方を変えた。廃墟と宿屋が勝手に遠いと決めつけていた。しかし近いとなれば話は別だ。俺の住居!!
「ちょっと俺、大事なもの守ってくるは」
「おいまて!急に眼の色変えてどうしたんだよ!」
大丈夫、転生する時に女神様からチートアイテムは貰った。見に行くだけ見に行ってみよう。倒せるなら倒す。倒せられないならどうにか宿には近づけないようにさせてやる。そう考えながら、銀色のバッドを握りなおした。
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