少年と妖精

たろうEND

森の妖精リリィ

昔々、小さな村がありました。

この村には、森の奥深くに、いたずら好きな妖精が住んでいました。


妖精の名前はリリィ。


彼女は夜な夜な村の子供たちの家に忍び込んで、子供たちを笑わせたり、驚かせたりして楽しんでいました。

ある日の夕暮れ、リリィは森の外れでひとりの少年を見つけました。


少年は迷子になっていた。


彼は元気で心優しい少年でしたが、最近、村に引っ越してきたばかりで友達がいませんでした。

リリィは少年を元気づけようと、いたずら心で彼の周りで花の冠を作り、それを頭にそっと乗せました。


「な、何だろう?」


少年は驚き、周りを見回しましたが誰もいません。


「妖精さんの仕業かな?」


少年は半信半疑でつぶやきました。リリィはそれを聞いて、静かに笑いました。


その夜、リリィは少年の家に現れました。


「こんばんは、人間の子。私はリリィ、森の妖精よ」


少年は目を輝かせた。


「ほんとうに妖精なんだ!」


少年は喜びました。


「どうして僕に会いに来てくれたの?」


少年は尋ねると、リリィは満面の笑みで答えました。


「あなたの笑顔を見たいからよ」


それからというもの、少年とリリィは毎晩少年の家で会い、リリィは少年を夢の中に誘いました。

毎晩、夢の中では様々な冒険を共にしました。

少年はリリィのおかげで勇気を持ち、現実の世界でも友達を作ることができるようになりました。


しかし、ある夜、リリィは少年に悲しそうな顔で告げました。


「人間の子、もうすぐ100年に1度、……私の体にあることが起こるわ」


「……月食が始まったわ。見て、私の体は消えかけているの……。もうあなたを夢の中に連れていけなくなるわ……」


消えていくリリィを少年は涙を浮かべた。


「リリィ、君がいなくなったら僕はどうすればいいの?」


リリィはそっと少年の頭に触れ、優しく語りかけました。


「大丈夫よ、人間の子。あなたはもう一人でも大丈夫。友達もたくさんいるし、勇気も持っているわ。私がいなくなっても、私のことを覚えていてくれる限り、心に……私はいつもあなたと共にいるのよ」


その瞬間、リリィの姿は淡い光となり、消えていきました。


少年はリリィの言葉を胸に刻み、涙を拭いて前を向きました。これからも強く、優しく、友達と共に成長していくことを誓いました。


少年はやがて立派な大人になり、さらに年を重ね村の長老となりました。

彼はリリィとの思い出を大切にし、村の子供たちにもその話を伝えました。


リリィが教えてくれた勇気と優しさは、少年の心に永遠に生き続けました。

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少年と妖精 たろうEND @tarou_END

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