飛び降り

Kei

飛び降り

私が営業先に向かうため住宅街を歩いていたときだった。

その日はよく晴れていた。ふと顔を上げると、近くのマンションの屋上に人が立っているのが見えた。


誰か——飛び降りる


そう直感した瞬間、その人はふっと宙に浮き、そして落下していった。

時間がスローに感じた。私はその場に硬直してしまった。

その人が立っていた場所には揃えられた靴の先が覗いていた。

私は放心したままそれを見ていた。もはや何も起こるはずはなかった。


しかし次の瞬間、靴がすっと奥へ引っ込んで、視界から消えた。まるで誰かが手に取ったかのように。


私は息がとまった。

屋上に、誰か、いるのか


 もしそうだとしたら——


私は走ってその場を離れた。

遠くからサイレンの音が響いてきたが、振り返ることはできなかった。

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飛び降り Kei @Keitlyn

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