ミッドナイト・プリンス☆つるみくん

花ケモノ

Episode1・絶体絶命大ピンチ!

 わたしの名前は染井そめいアナン。今、絶体絶命の大ピンチ。事のなりゆきを今から話すわ。


 わたしは、真夜中の繁華街を散歩していたの。お気に入りのクラブでお友達と飲んで、踊って、気分が良くなったら、お月さまを見たくなったから、一人クラブを抜け出して外を歩いていたってわけ。


 季節は梅雨も終わり。さっきまで降っていたしとしと雨が止んだばかりで、街には湿気っぽい空気がむっつりと漂ってた。曇り空も晴れて、らんらんと輝くお月さまが見えたわ。わたし、好きなのよね。こういう夜の雰囲気って。気分がいいわ。なんて思って、ネオン街をスキップしながら歩いてた。


 そうしたら、男の人が女の人を連れて歩いているのに遭遇した。それって、一見おかしなことではないでしょう? わたしもそう思った。けれどね、すれ違いざまに、女の人に助けを求められたの。


 女の人は、ひどく酔っ払っていたけど、はっきりと男の人を拒絶してた。それで、女の人は無理やりお酒を飲まされて、男の人に連れ去られようとしてるんだ。って分かったの。だからわたしは、男の人を止めて、「すみません彼女、嫌がってますよ」って言ったの。男の人は、「うるせぇ!」って言ってわたしを突き飛ばした。


 突き飛ばされて、あぁ、これは悪い男だわ。わたしはそう思った。わたしは男に向かって叫んだわ。


「彼女を離しなさいよ! この、痴漢野郎!」


 それで今、胸ぐら掴まれてるんだけど。

 

 わたしに助けを求めてきた女の人は、男の足元に力なく横たわってる。


 通りには、通行人が結構居るんだけれど、誰もが見ないふりして通り過ぎていく。わたしは、男にすごい目つきで睨まれて、それだけで怖くて昇天しちゃいそう。だけど、ここで怯んだら負けだから、一生懸命睨み返してやる。


 その時、男の背後で誰かの声がした。


「女の子いじめるなんて、みっともないぜ、おっさん」

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