-面(ツラ)-

初めに肌荒れに悩んだのは。12歳の時。中学生になって初めて生理がきた。「ホルモンバランス」っていうのが乱れているせいなのか。ある日、目が覚めて学校に行くために身支度を済ませる為、洗面所へ向かった。鏡をふと見ると、鼻の頭にポツンと赤いニキビが出来ていた。私は凄く嫌だった。しかも鼻の頭にできたもんだから、なんだか真っ赤な鼻のトナカイみたいで恥ずかしかった。「ニキビが恥ずかしいから学校を休みたい。」と母親に言うと、「馬鹿な事を言ってるんじゃない。」と怒られ、嫌々ながら学校にいった。

学校につくと、案の定、私のニキビを男友達の裕也はいじってきた。


裕也:「おい。麻衣、鼻どうしたんだよ。赤いのポツンとできてるぞ。」

麻衣:「うん。ニキビ出来ちゃって、恥ずかしいんだ。」

裕也:「ふーん。まあ汚いからさっそと病院いけよ。」

麻衣:「・・・。」


なぜだろう。いつもならどんなに憎まれ口を叩かれてもノーダメージなのに、今日の、このやり取りだけは、鮮明に残ってしまった。

私は放課後、裕也に言われたとおり、皮膚科に行った。飲み薬と塗り薬を処方してもらい家に帰って、寝る前に薬を塗って早めに寝た。翌日起きてみると、赤いニキビは昨日よりも小さくなっていて、嬉しかった。この日は母親には悪いが、具合が悪いといって仮病を使わせてもらった。この日はずっと自分の部屋で鏡を見ていた。早く治らないかと願っていた。夜はまた薬を塗って早く寝た。


次の日、鏡を見てみると鼻の上に出来た赤いニキビが無くなっていた。私はとても嬉しかった。でも、今度はおでこに2つ赤いニキビが出来てた。

肌荒れがバレて、また傷つくことを言われるのが怖かった。だから前髪を作って、アイロンで整えて、ヘアスプレーで固めた。

少しだけコンシーラーとファンデーションを使って先生や友達にバレないようになんとかニキビを隠した。そして学校に向かった。



裕也:「おはよう。麻衣。」

麻衣:「おはよう。裕也。」

裕也:「珍しいね。前髪作ったんだ。」

麻衣:「うん。そうなんだ。気分を変えてみようと思って。」

裕也:「ふーん。いいんじゃない?可愛い。じゃあ。」

麻衣:「ありがとう。じゃあ。」


良かった。ニキビのことバレなかった。これで傷つかないですむ。

一安心したところで、私は1時間目の授業が始まる前にトイレに向かった。トイレに入って一息ついて、出ようと思ったところ、こんな会話が聞こえてきた。


女子1:「ねえ、同じクラスの美香(みか)さんって肌荒れしすぎてやばくない?」

女子2:「たしかに。肌汚いし、ちゃんと洗ってるのかなぁ?(笑)。」

女子3:「わかるー(笑)。ニキビ菌が移りそうだから近づかない方が身のためだよね。私達は可愛いくて、スタイルが良い一軍女子だから肌荒れとは無縁だけどねー(笑)。あ・・・やばい。チャイムなったよ。教室戻ろう。」


その後、三人がトイレから出ていく足音を確認して、トイレから出た。私は怖くなった。美香さんは、私よりも肌荒れがひどい女の子で顔中がニキビだらけである。そのせいなのか友達も少なく暗い性格だ。おまけに太っているから夏場は汗や油で顔がテカっている時がある。

クラスメイトからも気持ち悪がられており、まさに嫌われ者の象徴のようなものだ。おまけに名前に「美」と入っているから名前負けしているとよく噂されている。

私は、肌荒れが悪化したら、美香さんのような扱いをうけるのではないかと怖くなり、仮病でお腹が痛いと言って、保健室に行った。放課後、裕也が私の荷物を保健室まで届けてきてくれて、体調のことを心配してくれた。少し心が痛かったが、心配してくれたことがうれしかった。私は内心、「美香さんほど肌汚くならないから平気。」と自分に言い聞かせていた。


ただ、私の思いとは裏腹に、私の肌荒れは日に日に進行していった。初めは鼻の上に1つしかニキビが無くて、おまけにちゃんと治ったのに、今度はおでこにニキビが2つ出来て、その後は薬をつけても薬をのんでもなぜか日に日にニキビは増す。私はもう鏡を見るのが嫌になった。学校にも行きたくなくなった。仮病も日に日にバレて使えなくなった。「肌荒れがひどくて学校に行きたくない。」と親に言ってもやはり相手にされなかった。どんどん自分に自信が無くなった。それでも学校に行って、授業を受けて帰る。幸い、ニキビだらけの顔になっても仲良くしてくれた友達がいた。ただ学校にいる間、話かけられても気が気じゃなかった。先生だって信用できなかった。本当は友達も、先生も私の肌を見て汚いって思っているんじゃないかってずっと疑っていた。そんなことを思いながら、学校生活を過ごしていたもんだから性格はだんだん歪んでいった。そして私も美香さんと同じように笑われる対象になっていた。裕也もある日を境に声をかけてくれなくなっていた。

私は肌荒れしてから卒業するまでずっとマスクをつけた。具合が悪いわけじゃない。ただ肌荒れを隠したくて、マスクをつける生活をし続けた。勿論、私は「肌荒れを隠すためにマスクをしている。」と噂があった。噂を気にしないふりを続け、肌荒れいじりもなんとか笑顔でかわし、中学校生活を過ごした。

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